中国で、あまりにひどい作りが話題となった国産アニメ映画「牛来」が、〝怖いもの見たさ〟の観客を集め、異例のヒットとなっている。香港メディア「星島頭條」が16日、報じた。

 同作は8月5日に公開された上映時間86分のアニメ映画。公開から10日間の興行収入はわずか7711元(約16万円)、観客も300人に満たなかった。ところが14日ごろから、SNS微博などで「CGがひどすぎる」「ストーリーが意味不明」などと話題になり、状況が一変。観客によるネタ投稿や二次創作が相次ぎ、北京や広州などでは映画館が上映回数を増やした。1日の興収が約80万元(約1600万円)に達するなど、突然のブームとなった。

 主人公「牛来」をはじめ登場人物の表情や動きは硬く、衣服の模様も不鮮明。物語は、子牛が砂漠から飛んできたヒバリを夢の世界へ誘い、さまざまな力に導かれて勇士へ成長するというものだが、観客からは「何を言いたいのか分からない」との声も。それでも劇場では笑いが絶えず、ある観客は「1時間見て1時間笑った。何がおかしいのか分からないが、仕事や生活のストレスを忘れられた」と絶賛した。

 さらに驚くのは製作体制だ。主要スタッフは信雨萌監督と母親のわずか2人。信監督が監督、出演、声優など、ほぼすべての作業を担当し、母親も制作に加わった。エンディング曲まで母親が歌い、完成まで5年を費やしたという。製作会社はもともと内装工事を主な事業としていた。

 配給会社の関係者は、完成作を見て信監督に「公開しない方がいい」と忠告したものの、本人が強く希望したため劇場公開を手伝ったと明かした。

 ネット上では「映画詐欺だ」との冗談まで飛び出す一方、その素朴さを評価する声も。専門家は、製作者が実力以上に作品を飾ろうとせず、能力の限界までそのまま映し出した〝力の抜けた作風〟が、かえって若者の共感を呼んだと分析している。