自民党元総務会長で“最後のドン”と呼ばれる笹川堯元衆院議員(90)が本紙インタビューに応じた。新著「内憂外患 日本よどこへゆく」(青志社)を上梓。混迷する日本の政治と激動する国際情勢を案じる笹川氏は、第2次改造内閣を発足させた高市早苗首相をどう見ているのか。

 ――内閣改造で主要閣僚は留任した

 笹川氏 茂木君(敏充外相)に会ったから、「外務大臣、ここは見せ場だぞ。外交交渉で点数上げなかったら日本はやれませんよ」と言っておいた。外交は継続性だから「初めまして」で名刺を出していてはダメ。島国の日本で外務大臣は2人いてもいい。

 ――副大臣のサポートでは務まらないのか

 笹川氏 ダメダメ。盲腸と一緒。あってもなくてもいい。ヨーロッパに行くのに15時間もかかるのに移動している間に相談事をしたら終わっちゃうよ。外務大臣は国会が始まっても東京に戻らないで、海外で務めていればいい。石破(茂前首相)君は防衛大臣の時、中国に行って、国防大臣と飲み比べして勝ってきたなんて言っていた。

 ――小泉進次郎防衛相も留任した

 笹川氏 防衛大臣って難しい。国を守るのは当たり前だけど、火災保険みたいなもので、入らないといけないが、入り過ぎても払込金が増える。軍備は戦争が起きない程度に持つのが一番いい。何でも飛んできたら落とすと言って、自信過剰になったら困る。中国大陸から10万機のドローンを飛ばされれば、もうアウトで、1隻の艦艇もいらない時代になろうとしているんだから。

 ――官邸主導で派閥からの順送りはなく、実務型との評価だ

 笹川氏 大臣に向いていない人を無理やり入れてもいいことない。ただ、派閥の力が全くないかといえばそうではなく、高市さんも総裁選でぶつからないように取り込んでいる。派閥は一種の塾だから、そこでもまれて友達をつくって、たとえばかつての田中派は総合病院だった。外科も内科も全部ある。今、麻生(太郎)さんのところに全部あるかといったら、ややあるかなぐらい。茂木君のところは40人くらいで偏っているよね。派閥がダメなんじゃなくて、悪いところを外せばいい。専門職をつくるプロ集団にならないと、みんな同じ答弁になって、味も素っ気もなくなる。

 ――三男の笹川博義氏が環境相で初入閣した

 笹川氏 せがれは県会議員を2期やって、環境政務官、副大臣もやった。小泉さんが環境大臣の時の副大臣で、コンビだったんだよ。60歳までに閣僚を1回ぐらいやらないとダメ。クマ被害対策担当っていうけど、大変ですよ。日本は奥行きが短いからクマが出る気になればすぐに出てきちゃう。学習しているから甘い柿の木があれば、また出てくる。しかも「入店お断り」とできない。自動扉だから誰が来ても開いちゃう。人の姿が映った時だけ開くように改造しないといけない。口で言うのは簡単だけど実際に実行するのは時間もお金もかかる。

 ――高市政権の支持率は50%台を維持し、正念場は2年後の参院選になるのか

 笹川氏 参院選は鬼門ですよ。橋本内閣も安倍内閣も負けた。税金を上げるといって、賛成する人はいない。だから上げたものは絶対に下げちゃダメって、言うんだよ。コメの値段が高いからといって、それだけで石破君の政権は飛んじゃった。あとはトランプさんからどれだけ「あれを買え、これを買え」と言ってきた時に高市さんがうまく断れるかどうかだ。関西弁で言えば、「考えとく」と言って、帰ってくればいい。あとで催促されたら「え~!」と言えばいい。

 ――日中関係は依然、亀裂が走ったまま

 笹川氏 台湾問題は口にすべきじゃない。プラスなんかない。尖閣諸島ですら、田中角栄さんと周恩来は日本のものとも中国のものとも言わずにぐにゃぐにゃにした。外交はだまし合いですから、二枚舌どころか三枚舌か四枚舌ぐらいなきゃやれない。いろいろ日本の先行きを考えると、夜眠れなくなる。自分の出番があるわけじゃないけど、やっぱり若い人にもっと広く勉強してもらいたい。政治は決断と実行だから。議して決せず、決して行われなかったら何もならない。

 ☆ささがわ・たかし 1935年生まれ。東京都出身。86年の衆院選で自民党公認で初当選し、新進党を経て、自民党に復党。森内閣で科学技術政策担当相を務め、衆院予算委員長、衆院議院運営委員長、総務会長を歴任。衆院7期。公益財団法人全日本空手道連盟名誉会長。父親は日本船舶振興会(現・公益財団法人日本財団)初代会長の笹川良一氏。三男の笹川博義氏は環境相。著書に「昭和・平成 怪物秘録 最後のドン 独占インタビュー」、「内憂外患 日本よどこへゆく」(ともに青志社)。