ドバイ発テルアビブ行きの航空会社フライドバイの旅客機で9月30日、オマーン国籍の副操縦士がインド人機長スミット・マッチャルさんを刃物で刺し、機体が急降下する事件が発生した。まるで航空パニック映画のような危機を救ったのは、航空事故番組を見ていた乗客だった。イスラエルメディア「ワラ!」が1日、報じた。

 イスラエルのネタニヤフ首相によると、副操縦士は機体を墜落させようとしたという。負傷した機長がコックピットのドアを開けると、イスラエル人乗客4人が突入し、副操縦士を制圧。その間にも機体は2分足らずで約4300メートル以上も高度を失った。

 乗客4人は速やかに役割を分担した。ツビカ・マンスさんは副操縦士を取り押さえ、乗客に配られていたヘッドホンのコードを使って縛り付けた。アサフ・レジュアンさんは制圧に加わり、パイロットらをコックピットへ誘導。ショタ・ムサイエフ医師は刺されて重傷を負った機長を救護し、止血などの応急処置を施した。そしてハユンさんが急降下する機体の操縦桿を握った。

 驚くべきことに、ハユンさんがとっさに操縦桿を操作できたのは、航空事故を検証するテレビ番組を見ていたからだったという。

 ハユンさんは操縦桿を握ると、手前に引いた。どうすればいいか分かった理由について、航空事故を検証するテレビ番組「エア・クラッシュ・インベスティゲーション」を見ていたからだと説明した。日本ではナショナルジオグラフィックのドキュメンタリー番組「メーデー!:航空機事故の真実と真相」として知られている。

「メーデー!」は事故の経緯だけでなく、コックピットでパイロットがどのような操作をしたのかを再現映像などで詳しく描く。ハユンさんは番組から得た知識を、現実の危機でとっさに生かしたとみられる。

 ハユンさんが機体を立て直した後、乗客として搭乗していた別のパイロットらが操縦を引き継ぎ、機体をサウジアラビアに緊急着陸させた。約180人が乗っていたと報じられている。

 副操縦士の氏名は公表されておらず、動機も現時点では明らかになっていない。イスラエルと副操縦士の国籍であるオマーンには外交関係がないことから、イスラエル当局は、なぜ副操縦士がテルアビブ行きの便に乗務していたのかについても調べている。