【グレイシーハンターの〝真実〟 IQレスラー桜庭和志 実録 桜道(20)】16人参加の無差別級トーナメントで2000年5月1日に開催された「PRIDE GRANDPRIX 2000」2回戦のホイス・グレイシー(ブラジル)戦は6ラウンド(R)までもつれ込みました。
グレイシーサイドの要求で無制限Rで行われたんですが、ここまで来るとホイスの疲労は表情や呼吸を見れば明らかでした。何より、ハート(心)のスタミナが切れてきている感じがしましたね。こっちからしたら「暑いなら上だけでも道着を脱げばいいのに」って思ってましたけど。
そしたらセコンドに「サク、飛べ!」って言われたんですよ! いやいや…。だって6R目ですよ?〝疲れてるから飛べねえよ〟って思って…。そしたら、その瞬間に思いついたのが「リングにかけろ」(※)に出てくる香取石松の「ハリケーンボルト」だったんです。〝そっか、ハリケーンボルトならジャンプしなくても手を伸ばせばいいだけだ!〟って。それでやったらお客さんが沸いたんで、良かったです。
ただ、僕も6Rが終わった時には疲れがあって。セコンドに「たぶん、あと2Rくらいでスタミナが切れる」っていう話をしたんですよ。そしたら、そのタイミングで向こうがタオルを投入したんです。その瞬間? 目的達成!って感じでした。安堵ですよ。良かった…って。たぶんホイスも限界だったんですよね。で「俺このままいったらギブアップするぞ」ってセコンドに言ったんだと思います。それで周りが「ギブアップするのはダメだ」ってタオルを投入したんじゃないですかね。
でも、これで終わりじゃないんですよ、この日は。勝ったら準決勝があったんです。その相手は前の試合でゲーリー・グッドリッジに勝った〝北の最終兵器〟イゴール・ボブチャンチン(ウクライナ)でした。ほとんどの人は僕が準決勝に出ないと思っていたはずですよ。大会前に「準決勝は棄権する」って言っていたし。でも、だからこそ僕は〝絶対に出てやる〟って思っていました。だって、みんなが出ないと思ってるなら、出た方がおいしいじゃないですか(笑い)。
それでホイス戦後に高田(延彦)さんから「サク、次はもういいから」って言われたんです。だけど「いや、僕出ます。まだできます。できるところまでやらせてください。できなくなったら僕は自分でも〝できない〟って言いますから」って伝えました。そして僕は、ボブチャンチンとの準決勝に臨みました。ところがその前にまさかの落とし穴が…。
※車田正美による人気ボクシング漫画。週刊少年ジャンプで1977年から81年まで連載。「ハリケーンボルト」は漫画に登場する香取が飛び上がって落下の勢いをつけて殴る必殺技














