【グレイシーハンターの〝真実〟 IQレスラー桜庭和志 実録 桜道(18)】2000年1月30日、参加16人の無差別級トーナメント「PRIDE GRANDPRIX 2000」が開幕しました。1回戦の相手ガイ・メッツァー(米国)はとにかく〝くせ者〟でした。
全く危険を冒さないんです。何発か向こうのパンチも入ったんだけど、一切の追撃をしてこない。とにかく守り続ける。こちらがローキックとかを蹴って誘いをかけても全く乗ってこない。あっちの方がリーチがあるから〝これは崩すのキツいな〟と思っているうちに1ラウンド(R)が終了しちゃったんです。
このトーナメントは1R15分で判定がドローだった場合は延長戦を行う規定でした。だから延長戦をやるはずだったんですが、それが告げられた瞬間に向こうの陣営が怒りながら引き揚げてしまった。後で聞いたら、あちらは1Rしか戦わない契約だったとか。結果メッツァーの棄権で2回戦に駒を進めることになりました。
次の相手はファン投票の結果、ホイス・グレイシー(ブラジル)に決まりました。印象ですか? あのGPの中心はホイスだったんで「ここでやっつけたらおいしいな」って。ルールもホイラー戦同様にいろいろ言ってきましたね。「レフェリーストップなし」とか「1R15分の無制限ラウンドで判定決着なし」とか。これには「トーナメントなんだから決まったルールでやらなきゃダメでしょ」って思いましたけど、同時に「向こうの条件に乗って倒したらめっちゃおいしいよな」とも考えてました。
そんな心境だったから、会見の時に口で仕掛けたんですよ。「無制限ラウンドなら1週間戦ってやる」とか「なんで自分たちだけルールが変わるんだ?」とか「おむつをはいて戦ってやる」とか。そしたらホイスが怒ってワーってしゃべって「ふざけんじゃねえぞ!」って感じのやりとりになったんです。
よく覚えているのはその後のことでした。会見を終えて帰る時、ホテルのロビーでホイスとそのセコンド数人にバッタリ出くわしたんです。そしたらホイスが「お前、うまいことやるな!」って(笑い)。僕も「そちらこそ!」って感じで返して、お互いケラケラ笑って別れました。だからホイスも分かってるんですよね。表でちゃんと盛り上げた方がいいって。
その時に「こいつらも俺たちと通じるものがあるのかな?」って思ったんですよね。それまでルールを変えたりしてきて「なんなんだよ」だったんだけど「アイツらなりに盛り上げようとしてやってるんじゃん」と気づいて。要は「グレイシー一族」という〝ヒール〟をやっている感じだったんですね。そういうノリがグレイシーにもあるんだなっていうのを知った出来事でしたね。













