数字の奥で、2人の日本人右腕が静かに牙を研いでいる。米有力紙「ニューヨーク・タイムズ」傘下のスポーツ専門サイト「ジ・アスレチック」は9日(日本時間10日)、直近1か月で球威指標「Stuff+」を改善させた先発投手を特集した。

「Stuff+」は、球速、リリースポイント、縦横の変化量、回転数など1球ごとの物理的特徴を基に、打者にとってどれだけ厄介な球質かを平均100のプラス指標で示すもの。コースや実際の打球結果とは切り分けて評価され、数値が上がるほど球のキレ、変化、球速差、見づらさなどが増し、空振りや弱い打球を誘う土台が良化していることを意味する。

 ノーラ(フィリーズ)、シーハン(ドジャース)、バーク(ホワイトソックス)、ロブレスキー(ドジャース)らの名前が並ぶ中、ドジャースの佐々木朗希投手(24)とロッキーズの菅野智之投手(36)にもスポットが当てられた。4月と比較した数値は佐々木が102から109へ、菅野が79から84へ上昇。タイプは対照的ながら、2人とも投球の中身に〝変化〟が表れているというわけだ。

 とりわけ佐々木への評価は熱い。同サイトは、フォーク系からより速いスプリットへ軸足を移したことでストライクゾーン内で勝負できる選択肢が増え、奪三振率から与四球率を引いた指標も一気に改善したと分析。実際、5日(同6日)の本拠地エンゼルス戦では圧巻だった。7回を2安打無失点、2四球、メジャー自己最多の10奪三振。勝敗こそ付かなかったが、チームは9回にフリーマンのサヨナラ本塁打で1―0勝利を飾った。今季成績は11先発で3勝3敗、防御率4・03、58回で60奪三振、WHIP1・26。開幕直後の荒れた印象は、かなり薄れてきた。

 一方の菅野は、佐々木のような剛球で押し込むタイプではない。同サイトも、もともとの球威自体は高くない投手としつつ、多彩な球種とまずまずの制球で生き残る存在として言及した。だが、その〝地味な改善〟が勝ちにつながった。9日(同10日)の本拠地クアーズ・フィールドでのカブス戦に先発し、5回を6安打3失点、2四球、3奪三振で6勝目。ロッキーズは7―3で勝ち、4連敗を止めた。今季は13先発で6勝4敗、防御率4・08、68回1/3で39奪三振、WHIP1・29。派手さはなくとも、ロッキーズ投手陣の中で計算できる存在になりつつある。

「Stuff+」の改善組には、球速上昇が目立つノーラ、スライダーを改良させたバーク、変化球の質を上げたロブロレスキーらもいる。ただ、佐々木と菅野の2人は、同じ日本人メジャーでも歩む道筋がまるで違う。佐々木はスプリットを武器に再び怪物感を取り戻し、菅野は熟練の引き出しで苦境のコロラドに白星を運ぶ。6月以降の反攻を占う上で、この〝二つの変化〟は見逃せないシグナルになりそうだ。