戻ってきた男が、ベンチの空気までかき回した。日本ハムは9日のDeNA戦(エスコン)に4―1で快勝し、5連勝で今季初の貯金「3」に到達した。主役の一人となったのが、この日から一軍に復帰した水谷瞬外野手(25)だ。すぐさま「1番」で先発起用されると、2回に左前打。2年前の2024年交流戦で歴代最高打率となる4割3分8厘を残し、MVPに輝いた〝交流戦男〟が、復帰初日から存在感を示した。

 本来なら今季も〝セ界討伐〟の旗頭となるはずだった。だが、4月19日の西武戦(エスコン)で走塁中に送球を受け、左尺骨遠位端を骨折。約1か月半にわたって二軍でリハビリを強いられた。水谷は試合前練習後、「練習でもボールが見えていたので。今年はケガをして悔しい思いもしましたけど、またここから巻き返したいという思いはある」と力を込めた。

 ただ、水谷の昇格は単なる攻撃力アップだけにとどまらない。新庄剛志監督(54)の狙いは、左翼を巡るチーム内競争の再点火にもある。象徴が野村だ。水谷離脱後に外野でも出場機会を広げ、打撃も上昇。6月は試合前まで5試合で打率4割2分9厘と猛アピールを続けていた。そこへ水谷が戻れば、自然と尻に火がつく。マルティネスらを含め、絶対的な固定選手がいない左翼争いは一気に熱を帯びる。

 球団OBも「今季の日本ハムの左翼は、チーム内で数少ない未固定のポジションです。そこが固まれば穴はほぼ埋まる。新庄監督は水谷を使いながら、状態のいい野村やマルティネスらも乗せようとしているのでしょう。交流戦の起爆剤というより、今後のリーグ戦を見据えた一手と捉えた方がいい」と指摘する。

 効果は早速表れた。先発・伊藤が1失点完投で7勝目(3敗)。打線でも不振に苦しんでいた郡司が、3回に先制の適時二塁打を放った。直後にドラフト3位ルーキーの大塚が2号3ランを放ち、試合を決めた。試合後の新庄監督は「水谷君にも(安打が)1本出てよかったね。早く復帰してくれたし、交流戦の間に帰ってきてくれたので。明日も行きます」と笑顔だ。

 繰り出す策が次々とハマり始めた指揮官とともに、チームの勢いは加速する気配が漂う。