2025年度の沖縄・宮古島市の年間入域観光客数は126万3397人。前年度の過去最高をさらに上回り、島の注目度は一段と高まっている。観光需要の拡大を追い風に、ホテルや飲食店の運営、生活情報誌「宮古ストーリー」の発行、大相撲宮古島場所の勧進元など、多方面から島を盛り上げてきたのが株式会社アートアベニューの藤澤雅義社長だ。宮古島の未来をどう描いているのかを聞いた。

宮古島情報誌「宮古ストーリー」の4月号
宮古島情報誌「宮古ストーリー」の4月号
宮古島情報誌「宮古ストーリー」の5月号
宮古島情報誌「宮古ストーリー」の5月号

 ――宮古島の観光の現状をどう見ていますか

 藤澤 宮古島はこれからさらに可能性が広がる島だと思っています。ただ一方で、島全体として「観光で生きていくんだ」という共通認識が、まだ十分に根付いていない気もします。どう島の豊かさにつなげるかは、まだ途上です。

 ――その中で生活情報誌「宮古ストーリー」を発行している狙いは

 藤澤 宮古島には、島民にも観光客にも一体的に届くメディアが意外と少なかったんです。イベントが終わってから「そんなことがあったんだ」と知ることも多い。島の空気や情報、思いを共有できる媒体が必要だと思いました。「宮古ストーリー」はフリーマガジンで、3万2000部を発行しています。観光客にも島民にも配っていて、私自身もコラムを書きながら宮古島の魅力や課題を発信しています。

 ――昨年には「島の子 未来応援基金」も立ち上げました

 藤澤 学業成績でトップを取った学生に100万円を給付する制度。それとは別に「チャレンジ応援支度金」も設けて、成績に関係なく「これをやりたい」という志のある若者にプレゼンしてもらい、最終的に4人に50万円ずつ給付しました。島の子たちの中には、経済的な理由で前に進めない子が少なくない。たとえ島を出て成功しても、いつか宮古のために何かできる人になってくれたらうれしい。

 ――観光が伸びるほど、地域とのバランスも問われる

 藤澤 観光客が増えても、島の人たちの収入が上がらなければ意味がない。地元に還元されない構造になれば、必ずズレが生まれます。利益をしっかり島に返す仕組みを作らなければいけない。

 ――市長には“大水族館構想”も提案しているそうですね

 藤澤 構想段階ですが、本気で面白いと思っています。宮古島は海が素晴らしいのに、雨の日に行ける場所が少ない。天気が崩れると過ごし方が限られてしまうので、大型の屋内施設が必要だと考えました。しかも、ただの施設ではなく、宮古島を象徴する“アイコン”になるものがいい。私はUFO型の外観の水族館をイメージしています。

 ――ユニークなのは、社長ご自身がM―1グランプリにも挑戦していることです

 藤澤 社員とコンビを組んで出ています。きっかけは飲みの席の冗談みたいなものでしたが、実際にやってみたら2024年には1回戦を突破できました。アマチュアにとってはかなり難しいことなんです。うちの会社は上下関係をできるだけなくしていて、私は社員から“マーク”と呼ばれています。ニックネームで呼び合い、心理的安全性があって、自由に意見を言える会社にしたい。社員みんなでネタを考えて、私も社員から演技指導まで受けてますから。

 ――相撲や落語の催しにも力を入れています

 藤澤 島に文化や熱気を持ち込みたいんです。大相撲宮古島場所もそうだし、時津風部屋の応援も長く続けています。落語家の立川志の輔師匠の公演も宮古で開いてきました。宮古の人たちは結束力があって、面白いことにはちゃんと協力してくれる。その空気が島の魅力でもあります。

 ――宮古島の未来をどう描きますか

 藤澤 島民が誇りを持ち、暮らしが豊かになる形で発展しなければ意味がない。私は宮古島を“日本の宝石”にできると思っています。
 (インタビュー・佐藤愛生)