【取材の裏側 現場ノート】ソフトバンクは王貞治球団会長(86)のホークスでの歩みを次世代へつなぐ「王レガシープロジェクト」を今年から始動させた。24日には、歴代監督や球団の発展を支えたレジェンドらが本拠地に集結。王イズムを「文化的遺産」として未来へ手渡す取り組みに本格的に着手した。
今月20日に86歳となった「世界のホームラン王」は今も底知れない野球愛で満ちあふれている。今年3月に開催されたWBC1次ラウンド、侍ジャパンの初戦・台湾戦(東京ドーム)。誰よりも真剣な表情で試合前練習を見つめる王会長の姿があった。代表選手の動きを追いつつ、意外にも視線はスタンドの方を向いていた。
台湾現地では1次ラウンドに合わせて、数万人が東京入りしたという概算もあった。「すごいお客さんだね。台湾の野球熱の高さを感じるね」。東京まで駆けつけた台湾からの来場者の多さに圧倒され、真剣な表情が一瞬だけ緩んだ。時間と渡航費を惜しまず海を越えてやってきた熱狂的ファンに敬意を表し、魅力的な市場へと成長を続ける台湾球界に強い関心を寄せていた。
抱き続けてきた青写真が広がり、胸がときめいているようだった。「台湾に根づいたように、次は中国の番だ。野球が発展していくには、やっぱり中国なんだ。あれだけの人口を抱えているし、国内の鉄道網も整備されてきた。インフラも整って、野球が広い国土で発展していく下地がある。野球がもっと世界中に広がっていくためのカギを握るのは中国なんだ。僕はそう思うんだよね」
中国では、今年から新たなプロ野球リーグ(CPB)が開幕した。未開拓の地で野球は今度こそ根づくのか、王会長も興味津々だ。新リーグは台湾プロ野球(CPBL)の発展をモデルに始動したという。グラウンドレベルの強化を図りつつ、エンタメ性を追求し、持続可能なプロリーグを目指していることがうかがえる。「政治的にとかではなく、文化的に交流していってほしい」(王会長)。
マーケットの拡大は野球振興において必須要件だ。縮小する市場に優秀な人材は集まらない。選手、監督、球団会長としていつの時代も「挑戦」を続け、若い世代の意見を積極的に吸い上げてきた。内向きの視点では先細る。その視線は今、福岡、日本にとどまらず、世界に向いている。(ソフトバンク担当・福田孝洋)












