現役を終えても、歩みは止まらない。アビスパ福岡などでプレーした、「&ベーグル」経営の木戸皓貴さん(30)は現在、福岡・ベスト電器スタジアムを拠点にキッチンカーでベーグルとハンバーガーを販売する日々を送る。度重なるケガや移籍、トライアウトも経験したキャリアの先で、サッカーとの関わりも持ち続けながら新たな一歩を踏み出している。将来への思いも含め、その軌跡をたどった。

キッチンカーから商品を手渡しする木戸皓貴さん
キッチンカーから商品を手渡しする木戸皓貴さん

 熊本・益城町出身の木戸さんは、サッカーを2歳上の兄の影響で4歳頃から始めた。海外サッカーに親しみ、「ACミランが強い時代で、インザーギやカカに憧れていた」。特にカカに影響を受け、背番号も同じ22にしていた。

 熊本時代から同じチームでプレーしてきた松田天馬(現京都サンガ)とともに東福岡高へ進学し、切磋琢磨した。「親元を離れてやるしかない環境で一気に変わった」。U―18サッカープレミアリーグでユース勢との力の差を痛感し、練習に打ち込み3年時には手応えをつかんだ。

 明大では右ヒザ、さらに左ヒザと前十字靱帯を断裂する大ケガを経験。それでも離脱期間に海外の試合を見続け、「自分ならどう動くか」を考え抜いた。マンチェスター・シティのアグエロのプレーを参考にイメージを積み重ね、復帰後はプレーの変化も実感した。

 2018年にアビスパ福岡でプロ入りし、3年間在籍。出場機会を得ながらも結果がかみ合わない時期が続き、もがく時間を過ごした。その後は山形、青森、三重と移籍し、トライアウトにも挑戦。「行かないと終わる」という覚悟で現役をつなぎ止めたが、度重なるケガに苦しみ手術を決断し、生活の拠点を福岡に戻した。

 飲食の道に進んだのは、サッカーとの接点を持ち続けるためだった。「アビスパに関わりたい」という思いから、スタジアムで直接サポーターと向き合えるキッチンカーを選択。夫婦で立ち上げた「&ベーグル」は25年11月にオープンした。「パンが好きで、ベーグルにハマった。誰もやっていないことをやりたかった」。妻の有佐さん(30)と共に運営している。

(右から)塩バターベーグル、Wチーズバーガー、あんこバターベーグル
(右から)塩バターベーグル、Wチーズバーガー、あんこバターベーグル

 塩バターやあんこバターといったベーグルが評判で、ハンバーガーも支持を集める。ベーグルを使った歯応えのある生地を採用し、「スタジアムでがっつり食べる」ことを意識した。食べ応えへの反応は大きく、改良を続けている。販売はベスト電器スタジアムに加え、天神や福岡・小笹などの住宅街にも広がる。さらに、現役時代に所属した山形や青森、三重でもキッチンカーを出したいという思いも口にした。

 ソサイチ(7人制サッカー)にも取り組み、今もピッチに立ち続けている。自身が立ち上げた「FUKUOKA CITY24」で代表兼選手としてプレーし、25年シーズンは3部からスタート。プレーオフを勝ち抜き一気に1部へ昇格した。今年5月には全国大会も控える。「戦う場があるのはやっぱり楽しい」と語る。さらに、東福岡の中学生年代クラブ「東FC」での指導や高校生へのコーチングに加え、女子サッカークラブ「福岡J・アンクラス」の活動を通じて子供たちとも向き合う。伝えられることは多い。

 飲食、サッカー、指導。複数の軸を持つ日々は現役時代とは異なるが、自ら選んだ道を進み続けている。その姿勢は形を変えても揺らぐことはない。

サッカー教室で子供たちに指導する木戸皓貴さん
サッカー教室で子供たちに指導する木戸皓貴さん