先日、赤ワインを飲み過ぎてしまい、結構な二日酔いになった。私は体質的に赤ワインに弱く、過去に何度も同じ経験をしている。「今日は赤ワインを飲むまい」と思ったのに、また繰り返してしまった。その時、ふと思い出したのが大学で学んだ心理学者のB・F・スキナーが行った「オペラント条件づけ実験」だ。簡単に言えば、ネズミなどの動物を使い、「良いことが起きればその行動は増え、嫌なことが起きれば減る」という学習の仕組みを調べたものである。

 実験の内容はこうだ。ネズミをレバーの付いた箱の中に入れ、その行動の変化を観察する。レバーを押すとエサが出る。するとネズミはレバーを押す回数を増やす。逆にレバーを押すと軽い電気ショックが流れるようにすると、その行動は減っていく。つまりネズミは結果から学習する。ところが私を含めた人間、いや、酔っ払いは少し事情が違う。二日酔いという不快な経験をしても、しばらくするとまた飲んでしまう。いったいなぜなのだろう?

 実は酔っ払いは学習していないわけではない。むしろ熱心に学習している。ネズミがエサをもらうとレバーを押す回数を増やしたように、酔っ払いも酒を飲んで心地よくなったり、ストレスが和らいだりすると、再び酒に手を伸ばすようになる。このように良い気分になったことで同じ行動を繰り返すようになることを「強化」と呼ぶ。

 問題は、二日酔いという罰がやって来るのが遅いことだ。飲んでいる時は「楽しい」が勝っているのに、二日酔いの苦しさを思い出すのは翌日になってから。人間の脳はどうも目の前の快楽に弱いようだ。酔っ払いが懲りないのも無理はない。

 私も再度、「今後、赤ワインは控えよう」と固く誓った。しかし、その記憶がどこまで持つかは正直あまり自信がない。結局、酔っ払いは学習しないのではない。二日酔いのつらさよりも、酒の楽しさを学習し過ぎているのである。