西武の高卒2年目育成左腕・冨士大和投手(19)が、17日に春季キャンプ地の宮崎・南郷球場で行われたケース打撃に登板。延べ12人の打者を相手に安打性はわずかに1本と、悲願の支配下登録へ向け確かな足音を響かせた。相手は一軍主力クラス。昨季パ・3位となる21本塁打をマークしたレオの主砲・ネビンから見逃し三振を奪うなど、内容は数字以上に濃かった。

 昨秋のフェニックスリーグではセ王者・阪神を7回4安打2失点(自責は1)に封じ、才木、坂本ら猛虎の看板選手たちを「まだ高卒1年目ですよね?」と驚かせた〝ロマン左腕〟。台湾で行われたウインターリーグでも3試合に先発登板し防御率0・59と圧倒的な成績を記録し、育成の身でありながら異例となる一軍キャンプ抜擢を果たした。首脳陣の期待が既に、育成の枠を超えていることは明白だ。

 細く長い腕は、まるで独立した意志を持つ蛇のように自在にしなる。伸びのある直球がキャッチャーミットに突き刺さり、独特の軌道で沈むチェンジアップが打者のタイミングを奪う。派手さはないが、間違いなく打ちにくい。そして何よりも、才木がかつて「タイミングが取りにくそう」と評した通り〝クセ強〟で異質だ。

周囲からの期待は大きい西武の育成2年目・冨士大和
周囲からの期待は大きい西武の育成2年目・冨士大和

 この日、最も球場をザワつかせたのは「一死一、三塁」の設定で迎えたネビンとの1度目の対戦だった。直球で空振りを奪いフルカウントへ。最後も直球。外角高めの球にネビンのバットは動かなかった。球審がストライクをコールし見逃し三振。静かな支配だった。

 降板後の冨士は落ち着いた口調で振り返る。「一軍の選手たちを相手にしても、ネビンから空振りを奪えたり、全体的に直球でファウルを取れたことは自信になりました。変化球もゾーンに入れば通用することは分かっているので、そこの精度を上げていければいいかなと思っています」

 投球はクセが強い。だが記者応対の物腰は終始柔らかく、言葉も整っている。19歳は自身の現状の課題を丁寧に言語化する。

 この日唯一の安打もネビンだった。2度目の対戦で失投を捉えられると、強烈な打球は三塁手のグラブをかすめ左翼線を割る二塁打。「チェンジアップが外に決まっていれば三ゴロだったかもしれません。でも内側に入ってしまえばネビンのような一軍の強打者には通用しない。変化球の精度を上げること。自分がやるべきことは分かっています」。悔しさよりも理解が勝っていた。

 背番号は123。19歳の育成選手はまだ何物でもない。だが野球という物語はいつも、こういう場所から静かに動き出す。