またしても、ドジャースが今オフの主役になった――。米スポーツ専門局「ESPN」の電子版で同局敏腕記者のジェフ・パッサン氏は11日(日本時間12日)、ドジャース入りしたカイル・タッカー外野手(29=前カブス)の大型契約が球界に漂う「不満」と「労使の火薬庫」を一気に可視化したと指摘。同記者の「カイル・タッカーのドジャースとの契約がMLBの〝労使和平〟に及ぼす影響」と題した記事が、MLB関係者の間でも大きな反響を呼び起こしている。
タッカーの契約内容が4年総額2億4000万ドル(約240億円)であり、支払い方法が「繰り延べ金」となっていることも、同局や複数の米メディアによって明らかにされているのは周知の事実だ。これに憤っているのはドジャースのアンチファンだけではない。多くの球団オーナーは「MLBにサラリーキャップが必要だ」との思惑を隠さず、極端な表現で〝家ごと燃やす覚悟〟まで口にする――というのがパッサン氏の描写だ。一方、MLB選手会側は、サラリーキャップ制導入は収入配分の主導権を奪う〝禁句〟だとして強く警戒。現行労使協定は米東部時間の12月1日(同2日)に失効するため、2027年シーズンを巡る攻防は現実味を帯びている。
では、なぜタッカーとドジャースの契約が「導火線」なのか。ドジャースはすでに贅沢税(CBT=競争力均衡税)の最高税率帯にかかる見通しでタッカーの「現在価値換算」に連動すると、獲得コストが年あたり約1億1990万ドル(約184億円)規模に膨らむ見通しであると報じられている。つまり「補強=戦力」ではなく「補強=制度そのものへの挑発」に見えてしまう瞬間があるというわけだ。
ただし皮肉なのは、そんな分断のさなかに競技人気はむしろ盛り上がっている点である。大谷翔平投手(31=ドジャース)のような超人気スーパースターの活躍や、ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の熱、そしてピッチクロックの導入などによるテンポ改善――。こうした「ベースボール革命」の波によって〝好きになる要素〟が増えているのも、また事実だ。だからこそSNS上では「サラリーキャップ制導入は待ったなし」「結局またロックアウトか」といった悲観的な意見も方々から噴出し、タッカーのような超大物の契約に関するニュースがそのまま〝労使不信の拡声器〟となっている。
パッサン氏が示唆する落としどころは、サラリーキャップの有無より「放映権と分配」の再設計だ。長らく主流だったローカル放映権モデルの揺らぎを背景に、MLBが放映権の束ね直しを狙う動きこそが逆説的に〝妥協の原資〟にもなり得るという。結局のところ、問われているのは「公平に見える仕組み」へ適応できるか――。パッサン氏の言葉をそのまま借りれば、帝国ドジャースが白星を重ねていくごとにMLB全体は皮肉にも〝次の戦争〟の足音を聞いているということなのかもしれない。












