新日本プロレス11日の大阪大会で、IWGPヘビー級王者の辻陽太(32)がジェイク・リー(37)の挑戦を退け初防衛に成功した。主力選手の退団が相次ぐ中で最高峰王者としてメインを締めくくった辻はリング上で「俺たちレスラーはカードゲームのカードじゃねえんだ」と魂の主張。親会社・ブシロードへの〝禁断発言〟の真意と、王者の覚悟とは――。

 衝撃のアピールはジーンブラスターでジェイクを退けた直後のリング上だった。マイクを握った辻は「おいブシロード! 俺たちレスラーはな、カードゲームのカードじゃねえんだよ! 俺たちはこのリングで命をかけて戦ってるんだ」と絶叫。「同じ方向を向いてくれ。このリングをもっと強く、もっとデカくするために一緒に歩いて行こうぜ」と呼びかけた。

 意味深長な発言はさまざまな憶測を呼んだが、近年の主力選手の相次ぐ退団が背景にあることは想像に難くない。2024年はオカダ・カズチカ、昨年は内藤哲也、今年はEVILと高橋ヒロムが新日本のリングを去った。大会後に取材に応じた辻は「ブシロードという言い方はよくなかったので謝りたいです。あれは〝ブシロードから来ているプロレス関係者〟への言葉です」と前置きした上で真意を明かした。

「今いる選手たちにも不満がある中で、誰かが言わないといけなかったんです。みんな退団に関して感覚がマヒしてないかなって。この状況に歯止めをかけたい。だから王者の僕が一石を投じないと、と思って。これは逆にチャンスなんです。ファンの皆さんも『大丈夫なのか?』と思ってる中で、現状をさらけ出して、膿を出し切った上でもっと新日本プロレスを盛り上げていきたいんです」

退団するヒロムを胴上げする辻陽太ら
退団するヒロムを胴上げする辻陽太ら

 決して会社批判をしたかったわけではない。退団者たちにはそれぞれの事情があることは百も承知だが「金銭面で言ってしまうと米国と日本でビジネスの差があるのは分かるんです。でもやり方はあるだろうと。僕は今こそ力を合わせたい」と提言。実は辻も今年の契約を更改したのが大会前日だったが「大前提、僕らは人間なんですよ。感情があるんです。契約の場でもプロレスラーとしてちゃんと向き合ってもらってるのか、疑問に思ってしまう時があるのも事実なので。僕らは命をかけて戦ってるということを伝えたかったんです」と説明した。

「僕は心の底から新日本は世界一だと思ってるんです。だからこの状況をただ『悲しい』と言うだけでなく変えたかったんです。それが僕の覚悟ですよ」。人材流出が続く昨今の団体事情を変えることができるのか。リングの外でも、辻の新たな挑戦が始まった。