【元局アナ青池奈津子のメジャー通信】「人生短いからこそ、愛する人はできる限り甘やかさないと」

 今オフにマリナーズと5年総額9250万ドル(約143億円)のFA大型契約を締結し、チーム残留となったジョシュ・ネイラー内野手(28=マリナーズ)はカナダ出身で“野球3兄弟”の一番上。世の人々の「理想のお兄ちゃん像」をギュッと詰めて体現したような人なんじゃないかと思う。

 アイスホッケーをやっていたこともあり、近年スマートな体格の選手が多い中では肉厚な重圧感のある体つきに、黒人と白人のミックスである褐色の肌と細かく弾むカールヘア。鋭いまなざしはいつでも威圧感を発揮できる構えがありながら、決して冷静さを失わない落ち着きも醸し出していて話し方もシリアスなのだが、実はとても優しい。

 そして、弟らの話をする時の“兄バカっぷり”といったら、話を聞いて数か月たった今も思わず笑えてしまうほどだ。

「料理はね、子供の頃、働き者の両親が家にいなくて3兄弟で過ごすことも多かったから、必然的に『自分が作らなきゃ』という日も多くて。母がいる週末は一緒に料理番組を見ていたし、母も新しいレシピを試すのが好きだったから、僕も『料理を覚えよう、作るならレベルの高いもの』をって。家を離れて野球生活を始めたら、自分で自分の面倒を見なきゃならならなかったしね」

 趣味の1つとして真っ先に挙げた「料理」。今でも料理番組を週3、4回見るというジョシュが見せてくれた写真には、ラムチョップにサツマイモのピューレ合わせ、バーベキューしたパイナップルの上にのせて手作りのソースで仕上げた一皿から、きのこ料理、七面鳥料理、自家製ハム、18時間もスモークしたリブ肉など、ハイレベルという言葉では収まらない代物が並んでいた。

 しかもホリデーなど特別な日でも何でもなく「普通の日だよ。ただ、皆の笑顔が見たくて。あ、ほら、これは具材を詰めたチキンのほうれん草添えで…。フェタチーズとトリュフマッシュルームだったかな」。自分が食べることよりも、喜んでもらうほうがベースになっているため、料理を出した後は必ず家族に品評してもらい、その改良点を次に生かしていくのだという。

 子供の頃から、長男として時に親代わりを務めてきた。「今でも何かしてあげるのが大好きなんだよね。だから一番下の弟には月に1、2回、野球用具を送ってあげている。2番目のボー(捕手・25=ガーディアンズ)は大リーガーになって良い用具にはアクセスがあるけど、末っ子はまだマイナーリーグだから。バット、バッティンググローブ、必要なものは何でも買ってあげる。甘やかしてあげるのが好きなのを弟もよく知っていて、うまく利用していると思うよ」とうれしそうに笑った。

 弟2人は過去8年間一度も家賃を払ったことがなく、スーパーでの買い物も、何なら車のガソリンまでもジョシュが入れにいってあげているらしい。理由は「愛、かな。彼らを愛しているし、大事な家族だから、お金をためてほしい。まだ若いから未来は明るいし、先も長い。自分たちのお金はなるべくセーブして備えてほしいんだ」。

ジョシュ自身もまだ28歳。こんなに大人びた考え方をするのには〝ある出来事〟が関係していた。

 ☆ジョシュ・ネイラー 1997年6月22日、カナダ・オンタリオ州出身。2015年のMLBドラフト1巡目(全体12位)でマーリンズから指名され、16年7月にパドレスへトレード移籍。17年のWBCにカナダ代表で出場。19年5月にメジャーデビュー。20年途中からガーディアンズ、24年にはオールスター戦に初選出。25年はダイヤモンドバックス、マリナーズでプレー。今季は147試合で打率2割9分5厘、20本塁打、92打点。178センチ、107キロ。