プロ野球セ・リーグは、阪神タイガースが圧倒的な成績で2年ぶり7度目の優勝を果たした。7年連続Aクラスの常勝軍団を陰で支えているのがチームの栄養アドバイザー・吉谷佳代氏だ。虎戦士たちが最高のパフォーマンスを発揮できるよう、日々、食事環境をサポート。そんな同氏に話を聞いた。
阪神タイガースの栄養アドバイザーを務めるきっかけになったのは2015年のことだった。新監督に就任した金本知憲氏から「選手の体づくりのため食事面を見てほしい」と球団を通じて依頼されたのだ。
当時は「寮に住む若手選手へ食事面でのレクチャー」という程度だったが、今ではシーズンを通して携わり「一、二軍を巡回して、選手にアドバイスしたり、遠征先でも食事メニューを監修している」と話す。キャンプなどの遠征中でも「選手が自分で食べている食事を写真で撮り、遠隔で見てアドバイスしています」と徹底している。
就任当初に感じたのは「お米はもっと増やせる」ということ。「タンパク質だけでなく、炭水化物の両方をうまく取れることが持久力にもつながっていく」
最近は「お米を当たり前のように食べるようになった」と変化もあり、加えて「栄養に興味を持つ選手が増えた」と吉谷氏。自分で調べ、栄養管理を率先して行う選手が増えてきたという。リードオフマンの近本光司外野手はその一人だ。
「もともと意識が高く、私が何かをアドバイスするよりは、近本選手の方から『これはどうですか』と同意を求めてくる感じです」
体づくりだけではない。長いシーズンを戦うために回復、リカバリーも大事な点として挙げる。「その日のうちのケアが基本。筋肉の修復のため、ご飯などの炭水化物とタンパク質をなるべく早く取ってと言っています」
さらにビタミンA、C、Eを含む緑黄色野菜の摂取も推奨する。
試合後もこれらの食事を取ることができるように「食堂に食事を用意しています。当然、食べる食べないの選択制ですが、食べて帰る選手が多いですね」と選手の意識が変わってきているという。
そんな長年の取り組みによって「夏場に体調を崩す選手が減ったなって感じます」と吉谷氏。「夏のタイガースはロードで移動が増えたり、違う環境で寝泊まりするため、毎年コンディションを崩す人が出てくる」。夏は高校野球のため甲子園球場が使えずビジターでの試合が続き、選手の調子が崩れる課題があった。
過酷なロードを乗り切るために腸の環境を整える“整腸”も大事だ。疲れがたまると腸も元気がなくなり夏場は特に疲れやすい。「腸が元気でなければ栄養を吸収できない。『R―1』などの乳酸菌や、野菜、キノコ類など水溶性食物繊維を取ることは腸にとっても大事」と力説する。
その“整腸”をうまく実践しているのが打線の中軸を担う森下翔太外野手だ。
「森下選手は自分がこれって決めたら積極的に取り入れてくれる。野菜や『R―1』を取ることで体調の変化を感じていると思う」
こういった長年にわたる栄養面でのサポートもあったことで、過酷なロードを乗り切れるようになったからこそ、常勝軍団になりえたと言ってもよさそうだ。
食の大切さは「やせられない」と悩む中高年にとってもヒントになる。
「お米を抜くという糖質オフは一時的にやせますが、糖質を戻せばリバウンドする。お勧めは油の制限。揚げ物のような脂質をちょっと控え、お米を取る」。また、「食べ方の順番を変えるのも効果はあります。野菜から食べると血糖値が上がりにくいので、選手にも勧めている」と“ベジファースト”の食べ方も推奨する。
お酒を飲む機会が多い人にとっては実践もままならないが、「『チートデイ』といって、好きなものをめちゃくちゃ食べる日をつくるのもいいです。それ以外はバランスのよい食生活にする。心の健康も大事なので」と語る。
それでも「毎日、チートデイと言ってくる選手もいますが、それはチートデイではありません」とクギを刺すのを忘れなかった。
☆よしたに・かよ 2001年徳島大学医学部栄養学科卒業。食品メーカーにて健康食品開発・スポーツサプリメント研究に従事。管理栄養士・スポーツ栄養士として、アスリートや学生、ジュニア世代への栄養指導、食育イベントに携わる。15年から阪神タイガースの球団栄養アドバイザーを務める。














