LAの熱狂に冷静な一石を投じたのは、あの名将だった。ドジャース・大谷翔平投手(31)とデーブ・ロバーツ監督(53)が世界一パレードで発した〝3連覇宣言〟に対し、ヤンキースで黄金期を築いた元監督のジョー・トーリ氏(85)が「警鐘」を鳴らして波紋を広げている。3年連続のワールドシリーズ制覇の重みを知る同氏が米老舗誌「ニューズウィーク」に明かした一語一句には、慢心ではなく「日々の積み重ね」こそが真の勝者を作るという厳しい現実が込められていた。
ワールドシリーズ2年連続制覇、そして3連覇へ――。歓喜に包まれたロサンゼルスのダウンタウンで3日(日本時間4日)に行われた世界一パレードの場で、ドジャースナインは熱狂の頂点にいた。だが、そのニュースを目にした1人の名将が渋い表情を浮かべながら「彼らはこれからが大変だろう」とつぶやき、静かに首を振っていた。声の主はヤンキース黄金期を率いたトーリ氏だ。
言うまでもなく、松井秀喜氏(51)が自らのヤンキース在籍時代について「野球人としての礎を築かせてもらった」と明かしている〝師匠〟でもある。そのトーリ氏が「ニューズウィーク」のインタビューに応じ、ドジャースの面々から飛び出した数々の「いきおい余るコメント」にこう苦言を呈した。
「3連覇は素晴らしい。しかし、シーズンの初めにそれを公言して自分を狂わせてはいけない。道のりには、あまりにも多くの障害がある」
ワールドシリーズ2連覇を祝う世界一パレードの終了後、ドジャースタジアムで行われた祝賀イベントの壇上でロバーツ監督が3連覇を意味する「スリーピート」の単語をファンに向けて連呼し、最後に「行くぞ!」と絶叫締め。場内が熱狂の渦に包まれたのは記憶に新しい。そして大谷も集まった5万2703人を前に英語でこう宣言していた。
「来年、もう一つのリングを手に入れる準備はできている」
ロサンゼルスの空を震わせた〝3連覇宣言〟。これにフレディ・フリーマン内野手(36)も「2024年の仕事は完了、25年の仕事も完了。26年の〝任務〟は今から始まる」と口にし、闘志をむき出しにした。まさにMLB全体を席巻しようとしている「ドジャース王朝」の幕開けを感じさせる瞬間だった。
だが、名将の視線は別のところにあった。「彼(ロバーツ)は確かに素晴らしい仕事をしている。だが、チームには〝われわれが何をしたか〟ではなく〝これから何ができるか〟を意識させることが大事だ」(トーリ氏)
トーリ氏自身が指揮した1998~2000年シーズンのヤンキースは3年間にわたり、史上屈指の完成度を誇りながらも勝ち続けることの難しさに苦しんだという。選手の慢心、メディアの過熱、連覇がもたらす見えない重圧。それらを乗り越え、ヤンキースは70年代初頭(72~74年)のアスレチックス以来となるワールドシリーズ3連覇を達成した。この輝かしい栄光を経験しているからこその忠告だった。
「常に自分とチームのモチベーションを高めるため、それらを誘発する〝何か〟を用意しなければならない必要がある」とも語ったトーリ氏の言葉には、勝者が陥りがちな「油断」への警戒心がにじむ。
ドジャースは大谷、山本、ベッツ、フリーマンらを中心に史上最強とも称される投打の布陣を誇る。2連覇を果たし、今やMLBで敵なしの存在だ。一方で過去に松井氏らを一流のメジャーリーガーへと育て上げ、他のスーパースターたちも巧みに操縦するなど「育成」と「勝利」を同時にこなしたヤンキースの名将は、最強軍団ドジャースにも〝落とし穴〟があることを知っている。
「3連覇」を唱えた瞬間から、チームは追われる側になる。ドジャースが歴史の壁を越えるのか、それとも名将の警鐘が現実となるのか。ロサンゼルスの祝宴の余韻の中でトーリ氏の静かな言葉だけが、ひときわ重く響いている。












