第107回全国高校野球選手権大会の3回戦で東洋大姫路(兵庫)に敗れた西日本短大付(福岡)には〝異色の主砲〟がいた。3試合で4番を務めた佐藤仁(3年)だ。

 15日に行われた聖隷クリストファー(静岡)との2回戦では、同点に追いつかれた直後の8回に値千金の左越えの決勝打。試合後には「相手の高部投手は球も速くてカットもキレていて、2年生とは思えない好投手。3打席目まで打てる気がしなかった」「ウチの吹奏楽部は本当に強い。1人ひとりが気持ちを込めて演奏してくれてその思いに乗って打球が伸びてくれたと思います」などと歯切れよく話していた。

 181センチ、98キロの巨漢でフルスイングとパワー、それに人懐こい笑顔が魅力の佐藤は、野球以外でも多彩な才能を持っている。作曲家の父の影響でピアノを演奏し、村上春樹好きの文学青年。チームメートいわく「月3冊は読んでいるし、遠征にも持ち歩いている」。中学時代に海外生活の経験があることで英語も堪能で、2年時のグアムの修学旅行では通訳並みの大活躍だったという。

 誰とでもすぐ打ち解ける〝コミュ力〟に長けており、大会期間中にナインが驚いた出来事があった。ある日、宿舎近くの公園で主将の小川(3年)と佐藤が2人で素振りをしていると、自転車に乗ったおじさんが近づいてきて「西短の選手か、頑張りや」と声をかけてきた。「ありがとうございます、頑張ります!」と答えて素振りを続けたが、気がつくと佐藤がおじさんと政治の話で盛り上がっていた。

「石破総理の2万円の給付問題を話し込んでいました。ついていけなかったんで一歩引いて素振りをしながら聞いていました。政治でも自分の考えを持っているし、大人と平気で選挙や社会の話ができる。そんなことできるのは彼だけです。日ごろからニュースをよくチェックしているんだと思います」と小川は舌を巻いた。

 大学進学の予定だが、強烈なスイングは同校先輩の日本ハム・新庄監督も驚いたほど。スター性も十分なだけに、今秋ドラフトのダークホースになるかもしれない。