2025年6月3日に亡くなった長嶋茂雄氏を偲び、同氏の第2次巨人監督時代を振り返った連載「ハダカの長嶋巨人」。常に話題の中心にいた「ミスター」を取り巻く人たちを含めた群像劇を、当時の東スポ巨人担当記者がつづります。
【ハダカの長嶋巨人#10・仁志敏久の巻】
長嶋巨人の斬り込み隊長といえば、この男。現在は西武で野手チーフ兼打撃コーチを務めている仁志敏久だ。
巨人入団当初は「ビッグマウス」として話題になったほど、歯に衣着せぬ言動で「近年の巨人にはいなかったタイプ」として大いに注目された。今でも強烈な印象が残っているのが、仁志1年目のジャイアンツ球場。1月某日、自主トレが終わった後のやりとりだ。
それまで、ドラフト2位で入団したばかりなのに「ダメだったら1年で引退する」という引退宣言を放ったり、コンバート拒否発言やレギュラー取り発言など、とにかく強気な発言を連発。マスコミ的にリップサービスは、過剰なら過剰なほど大歓迎なのだが、あの時ばかりは、そんな新人選手が心配になって「あんまり言い過ぎると試合でぶつけられるよ」と声をかけたことがあった。
ところが仁志は「ぶつけられるもんなら、いくらでもぶつけたらいい。やられたらやり返す。殴られたら殴り返すまでですよ」と、半沢直樹をほうふつとさせるセリフで返してくるではないか。
さらに「その大口はプロとしての営業用なのか?」と聞くと…。
「ボクはいつも言いたいことを言っているだけですよ。プロの選手ならそれぐらいの自信を持つことは当然。今の巨人の選手は控えめな発言が多すぎると思う」と先輩批判まで飛び出したのだから…。「こりゃあ、とんでもないルーキーが入ってきたな」と思わずにはいられなかった。
その後の仁志の活躍は周知の通り。スター揃いの長嶋巨人の1番・セカンドに定着し、まさに「有言実行」の選手だった。もちろん自分に厳しいだけではなく、他人にも厳しい(時もある)。ある日の試合前、松井秀喜が報道陣と下ネタトークを繰り広げていると「おい松井、くだらない下ネタばかり話してんじゃねえ! いい加減にしろ!」と説教を食らわしたこともあったぐらいだ。
一昔前はヤクルトOB、その後は西武OBが指導者のトレンドになったこともあったが、近い将来、長嶋巨人世代が12球団の指導者のトレンドになる日がくるとしたら…。仁志は間違いなく監督向き。勉強熱心で周囲から高く評価されている野球理論はもちろんのこと、その豪気な性格は、プロ野球人気にも一役買ってくれそうな気がしている。













