〝生活筋肉〟を鍛えた往復3時間の通学
好奇心旺盛でさまざまなスポーツに意欲的に取り組んでいた鶴田は、体育の授業ではラグビーに熱中した。
スクラムに加わり、キックオフやラインアウトなどで長身を活かして高いボールをキャッチし、大きな身体で突進するロックとして活躍。
ラグビー部にも何度も勧誘されたそうで、当時のラグビー部の同学年には、のちにサッカー選手になり、ジェフユナイテッド市原、大宮アルディージャの監督を務めた塩山出身の清雲栄純がいた。
その他、3年生の時には山梨県内の相撲大会(高校生の部)に駆り出され、1週間練習しただけで3位になった。
中学2年生の夏に朝日山部屋で稽古したことが思わぬところで活きたのである。
「バスケットボールではボディバランス、素早い身のこなし、持久力とジャンプ力を身に付けられた。一瞬の閃きで試合を構成する力もプロレスラーになってから役立った。ラグビーの経験はレスリングに活かせた。ラグビーのタックルの入り方、相手の動きの読み方がレスリングのタックルにも応用できた」と、鶴田は後年になって複数のスポーツを並行してやることの重要性を語っている。
小学校の時と同じように日川高校での通学でも〝生活筋肉〟を鍛えた。家から高校までの距離は約11㎞で高低差は実に230mもある。行きは下りだから1時間だが、帰りは上りのために2時間かかる。それを3年間毎日、3時間かけて往復していたのだ。
一緒に自転車通学をしていた池田は言う。
「私は山梨市駅から自転車だから通学にかかったのは20分ぐらいだけど、ツルの場合はそれにプラスして、牧丘から山梨市駅までの距離があったから大変だったと思いますよ。それで日川高校から山梨市駅の中間ぐらいにツルの親戚がやっている食堂があったんですよ。山梨市駅までは一緒だから、そこに寄ってご飯を一緒に食べてました。私もけっこう食べましたけど、ツルはその倍は食べましたよ。弁当にしてもツルのは特注のデカいやつでしたね」
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知られざる高校時代の素顔
日川高校は男女共学。長身でバスケットボール部のエースだった鶴田はさぞかしモテたのではないかと思うのだが、どうだったのだろうか?
「いやあ、それはちょっと(苦笑)。モテなかったですよ、規格外の大きさだから。ツルがモテ始めたのはプロレスに入ってアメリカに行ってからじゃないですかね。それで、どっちかというと向こうの人にモテちゃったんじゃないですかね。それで自信を付けちゃったんですよ、きっと(笑)」
プロレスラーにとって長身は大きな武器だが、思春期の鶴田にとっては大きいことがコンプレックスだったようだ。
「やっぱり大きすぎるという劣等感があったんですよ。ホントに嫌がってましたよ。そりゃあ、目立ちますよね。あれだけ目立てば注目の的ですよ。みんな好奇の目で見ますわ、あの頃は。常に人から見られていたらかなわないですよ。それから、ちょっと吃音があるというので、なかなか上手くしゃべれなかったんですよね。仲良くなってしまえば大丈夫なんですけど、親しくなるまで、ちょっとナイーブというか」
そんな鶴田が、池田と同様に心を許していたのが武井美男という同級生だ。武井は日川高校から明治大学に進学すると相撲部のキャプテンを務めた。
卒業後は明治大学付属中野中学校・高等学校の教員になって、相撲部の監督として若乃花勝(現・花田虎上)、貴乃花光司の兄弟横綱など、多くの力士を育てた人物である。
「タケ(武井の愛称)は体重が100キロ以上。背も180ぐらいありました。ツルとタケのふたりは特注のイスと机を学校に作ってもらったんですよ。それでなきゃ座れなかったから。そういう面でね、ツルもタケがいたことで癒されたかもしれないですね(笑)」
スポーツに励み、勉強にも勤しんだという高校時代の鶴田。もうひとつハマっていたのが高校1年の6月に初来日して爆発的人気を呼んだザ・ビートルズだったという。
「高校2年のバスケ部の合宿の時にね、余興なんかやるんだけど、ビートルズの歌なんか歌い出しやがってね。ビックリしましたよね(笑)。私なんかはツルの影響を受けてビートルズを知ったぐらいだから。どっちかというと塩山より田舎の牧丘の奴がビートルズの英語の歌を歌ったらビックリしますよ(笑)」
池田の話を聞いていると、スポーツ万能で、繊細な心の持ち主で……その一方では堀内ブームになれば野球を始め、ビートルズが来日すればハマってしまうミーハーの面もある微笑ましい高校生・鶴田友美の姿が浮かんでくる。
68年10月、3年生の秋に心に留まることがあった。メキシコ五輪に同学年の習志野高校の磯貝頼秀がレスリング97㎏以上級代表として出場したのだ。
「よし、俺も次のミュンヘン五輪に出場するぞ!」
オリンピック出場という中学3年からの夢に再び火がついたのである。そして4年後、鶴田は磯貝と五輪出場を懸けて戦うことになる――。
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