ドジャースの大谷翔平(30)の〝一振り〟が揺るがせているのは、MLBのスタッツだけではない。現地時間の4月18日に初の父親となったことを機に取得した「育児休暇」が日本のスポーツ界、さらには社会全体にまで大きな波紋を呼んでいるようだ。米メディア「エッセンシャリースポーツ」は今回の大谷の制度利用が母国である日本国内において、いい意味で旧態依然の流れに〝風穴〟を空けつつあると報じている。

 MLBでは2011年に導入され、ごく当然の制度となっている「父親リスト(Paternity List)」だが、日本では制度が存在しても文化的な壁は厚い。法律上、父親は最大52週間の育休取得が可能とされながら、実際に取得するのは30%台。多くの男性アスリートが「家庭よりチーム」を優先し、育児を〝陰に隠す風潮〟が根強く残っているのが現実だ。

 そんな中、大谷がMLBで堂々と育児休暇を取得したことは、まさに日本の価値観に一石を投じる行動だった。これに呼応するように、JリーガーのFW都倉賢(38=栃木SC)は「Jリーグにも父親リストを導入してほしい」とSNSで呼びかけ、さらに陸上界でも2022年世界選手権マラソン代表の西山雄介(30=トヨタ自動車)が1か月の育児休暇を取得。「『家族の時間を大切に』というメッセージが日本に静かに広がり始めている」と前出の「エッセンシャリースポーツ」は論じている。

 29日(日本時間30日)の本拠地マーリンズ戦で大谷は8試合ぶりの7号ソロ。「パパ初本塁打」を先頭打者で放ち、チームを15―2の大勝へと導いた。打球速度114マイル(約183キロ)の豪快弾に、ロバーツ監督も「これが〝パパの力〟か」と目を丸くした。

 それは単なる打者としてのパワーアップだけではない。大谷の「家庭を大切にする姿勢」は、今後のアスリート像に新たなモデルを提示している。「トップアスリートであっても、父であることを隠さなくていい」――そのシンプルで力強いメッセージが、日本のスポーツ界にも一石を投じようとしている。

 二刀流スターが背中で示す「もうひとつの革命」。この〝パパ翔平〟の姿こそ、日本社会に必要とされてきた新たなヒーロー像なのかもしれない。