【橘高淳 審眼(30)】何げなくファンの皆さんが球場を訪れて、試合前のグラウンドの状況を見ているといつも目に入ってくる光景があると思われます。これはどうでしょうね。テレビで見ていた方がカメラが近いので分かりやすいんですかね。試合開始の直前に両軍の監督がホームプレートの周辺に集まって、審判団にメンバー表を手渡し交換する場面がありますよね。

 あの行動一つを取っても実はしっかりルールブックに明記されているんですよ。何げなく行っているセレモニーではありません。場内放送では「両軍の監督によるメンバー交換です」などと紹介され、見ている方々は思い思いに拍手など送られています。公認野球規則の4・00「試合の開始と終了」からつづられている文章に詳しく書かれています。

 正確な文章に関してはご興味のある方がネットで調べるなり、本で読んでいただければいいので、ここでは分かりやすい言葉で説明させてもらいます。

 野球の正式なルールではホームチームが試合の延期や試合開始の遅延をあらかじめ申し出た場合を除いて、1人ないし数人の審判員は、試合開始予定時刻の5分前に競技場内に入り、直ちに本塁に進み、両軍の監督に迎えられます。

 まずホームチームの監督、または監督が指名した者が、球審に2通の打順表を手渡します。次に、ビジターの監督、または監督が指名した者が、球審に2通の打順表を手渡します。球審に手渡される打順表には、各プレーヤーの守備位置も記載されなければなりません。指名打者を使用する場合は、どの打者が指名打者であるのかを打順表に明記しなければなりません。

 球審は、複写式で2枚組の打順表が同じ表記になっているかを照合した後、相手チームの監督にそれぞれ打順表の複写された側を手渡します。球審の手元にあるものが複写元で正式の打順表となりますね。これにより、それぞれの打順表が確定します。

 ここからも延々に続きます。これ以降は審判に競技場内の全責任が託され、球審がプレーを宣告するという流れとなります。その後にもこの場合はこう、この場合はこうというように、いろんなケースについて言及されています。実際には試合開始5分前に初めてメンバー交換していては、スタジアムのスコアボードの表示や大型ビジョンでの選手紹介も間に合いませんから、その手前で作業としてメンバー交換は済ませてあります。

 興行の運営と正式な野球のプレーという部分は別の話であって、それでもルールにのっとって試合開始5分前に両監督と審判によるメンバー交換が今はしっかり行われています。実は昔はやっていなかったのです。でもベースボール、野球を今後も何世代にもわたって引き継いでいくべく文化と考え、ルールブックを順守しようということで、今の形にたどり着いたわけです。

 最近はMLBのカブスとドジャースとの開幕2連戦が東京ドームで開催されましたよね。その時もカブス・カウンセル監督とドジャース・ロバーツ監督がメンバー交換をしていたはずですよ。