日本の開幕戦でも千両役者ぶりを発揮した大谷翔平は、今や何をやっても大きな話題になる。別に打ったり投げたりしなくても、ちょっとした表情の一つひとつがニュースになり、動画がネットでバンバン拡散される。
開幕戦後の記者会見では山本由伸が取材対応している最中、会見場の後方に大谷が突然現れ、ヘン顔をして笑わせた。かと思えば、昨年のワールドシリーズ終了後には、テレビ局のカメラに珍しくコワイ顔を見せ、驚いたファンがSNSで騒いでいた。
大谷がそんな“顔芸”(と自分では思ってないだろうけど)を披露するたび、私は花巻東時代のエピソードを思い出す。大谷は当時からいろいろな顔をして見せ、チームメートを驚かせたり和ませたりしていたそうだ。
同期の野球部員たちが「今も忘れられない」と口をそろえたのが、高3最後の夏の甲子園を目指していた最中のことだ。
いつもは和気あいあいと練習に取り組む大谷が、チームメートに声を荒らげるようになった。ミスが出ると「しっかりやれ!」と怒ってにらみつけたりする。ある同級生によれば「そういう時の翔平は、普段ニコニコしているだけに本当に怖かった」という。
この年、高3春のセンバツで花巻東は藤浪晋太郎を擁する大阪桐蔭に大敗していた。それも、エースの大谷が9失点と大乱調だったことが最大の敗因である。次の夏は甲子園に出る最後のチャンスだったから、大谷もピリピリしていたのか。
しかし、練習を終えて寮に帰ると「いつもの翔平に戻ってるんです」と同級生たちは言った。大谷は大きく目を見開いたり、口をゆがめたり、さまざまなヘン顔をして見せては、みんなを笑わせていたという。そんな時「ああ、よかった」と誰もがホッとして、また明日から一生懸命練習しようと思ったそうだ。
大谷は高校時代から、寮でトレーニングや動作解析に関する書籍を読みあさっていた。主将の大沢永貴が卒業後、筑波大でスポーツ科学を勉強すると聞くと「役に立つ話があったら俺にも教えてくれ」と伝えたという。
大谷は高3夏の県予選決勝で3ランを打たれて敗れ、最後の甲子園には行けなかった。「あの時の悔しさがあるから、今頑張れてるんです」と大谷本人から聞いた。
メジャーリーガー大谷の一挙手一投足を見聞きするたび、彼の原点はやはり生まれ故郷・岩手の花巻東時代にあるのではないか、と思う。













