韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領は3日夜に「非常戒厳」を宣言し、約6時間後の4日未明に解除を表明した。非常戒厳は「戒厳令」の一種。戒厳令は軍事政権時代に16回も敷かれたことがあるが、1987年の民主化以降は一度もなかった。時代錯誤の〝クーデター失敗〟の代償は大きそうだ。

 非常戒厳は戦時、内乱などの非常事態が起きた時に大統領が宣言する。政治活動、ストライキ、集会を禁止し、言論・メディア統制するものだ。

 野党が多数派の国会で法案を通すことができず、自らの汚職スキャンダルで支持率が低下し、政府の官僚らへの弾劾訴追が22件相次いでいる中、「従北勢力を懲戒し、自由憲政秩序を守るために非常戒厳を宣布する」として非常戒厳を宣言した。親北朝鮮派が政権運営を邪魔しているという理屈だ。

 しかし、政治活動禁止の中、反発した議員190人(定数300)が即座に国会に集結し、戒厳指令部の介入前に解除の要求を議決した。国会周辺で国民のデモも発生した。そのため、国会の要求を受け入れて閣議決定し、宣言から約6時間で解除せざるを得なかった。平時に非常戒厳を出したため、憲法違反の声も出ている。

 最大野党「共に民主党」など野党6党は4日、尹氏の弾劾訴追案を国会に提出。6日か7日に採決する方向となっている。可決されれば、尹氏の大統領権限は停止され、憲法裁判所が罷免するかどうかを180日以内に判断する。

 韓国政局は重大局面を迎えている。韓国事情に詳しい文筆人の但馬オサム氏はこう語る。

「強硬手段で事態打開を狙ったとみられますが、失敗に終わったことでさらに窮地に追い込まれました。尹大統領からすれば、親北左派勢力を一掃する狙いがあったようですが、あまりにも拙速すぎました。わずか6時間で解除してしまったのも、むしろ笑いものにされるだけです。今回の騒動を〝クーデター失敗〟と見る向きもあるようですが、軍隊を掌握しきれていないクーデターなど成功するわけがありません。この失態は大きい。尹大統領は早晩失脚でしょう」

 おそらくは、反日反米の最大野党「共に民主党」李在明(イ・ジェミョン)代表が政権を取ることになるだろう。となれば、尹氏は投獄もありうる。歴史をひもとくと、それ以上の可能性もありそうだ。

「今回の尹氏の騒動を見て、スケールはあまりにも違いますが、李氏朝鮮末期、甲申政変で知られる朝鮮の革命家・金玉均(キム・オッキュン)とどこか被ります。金は、閔氏外戚政治を打倒するためクーデターを起こし成功しますが、結局、清の介入を招き三日天下に終わります。しかも諸悪の根源である閔妃を取り逃したため、彼女の追っ手によって暗殺され、その遺体はバラバラにされ野にさらされました」と但馬氏。

 1948年の建国以来、韓国には尹氏を除き12人の大統領がいたが、4人が逮捕され実刑となり、1人が亡命し、1人が暗殺され、1人が自殺した。

 尹氏の妻の金建希(キム・ゴンヒ)氏は収賄と株価操作の疑惑があり、尹氏は〝クーデター失敗〟となった。尹氏の末路は悲惨なものになりそうだ。