【山口敏太郎オカルト評論家のUMA図鑑#582】トロールと言えば、北欧、特にノルウェーに伝わる神話上の妖精の一種だ。巨大なもの、毛むくじゃらのもの、ツノがあるもの、赤毛のものなど、その容姿については様々であり、自由に姿を変えられるとも言われている。
また、作物や森林に危害を与える悪意ある存在とする言い伝えや、気に入った家に富と幸運を与える座敷童のような言い伝えもあり、トロール自体はとても多種多様に伝承が残されている。
神話上の生き物であるはずのトロールを目撃したという話はいくつかあるようだ。しかし、中にはトロールの姿を撮影したと言われている信じがたい写真が存在するのだ。
問題の写真は1942年の12月に、英空軍に所属するとある偵察機の乗組員が撮影したものであるという。ノルウェーのベルゲンという地域から北へ480キロメートルほど離れた森を眼下に置いたその写真の背景には、霧で覆われたその奥に巨大な人型の何かが浮かび上がっているのだ。
この奇妙な写真は、ルーシー・レイノルズという女性のウェブサイトで初めて公開されたものであった。彼女の説明によると、この写真は前述したように英空軍によって撮影されたものであり、また「グレート・マウンテン・トロール」の存在を証明する唯一の写真であるというのだ。
「Tales from the North:Norwegian Mountain Troll(北の物語:ノルウェーのマウンテン・トロール)」というタイトルで2012年7月31日に公開されたこの情報が事実であれば、実に70年以上の時を経て公開された貴重な写真であると言えるだろう。
だが、写真については当初から疑わしい点があったのも事実である。英軍が撮影したということであるが、具体的に誰が撮影したのかについては分かっておらず、さらに言えば、撮影された場所についても明示されなかったのだ。そして、その後に掲示板型ソーシャルニュースサイト「レディット」にて驚きの事実が明らかとなった。
Junglist313というユーザーがこのグレート・マウンテン・トロールの写真について調べたところ、この被写体となる影の正体は2010年にノルウェーで公開されたモキュメンタリー(フィクションを、ドキュメンタリー映像のように見せかけて演出)映画「トロールハンター」の一コマを切り抜いたものであることが判明したのだ。この切り抜いたトロールを、別の背景の画像と共に加工・合成したものがトロール写真の真相だったのである。
現在は既に削除されてしまっているルーシー・レイノルズのウェブサイトであるが、もともと彼女のサイトでは加工画像が多く掲載されており、またサイト名が「Lucy Reynolds Art」であったことから、アート作品として加工画像を公開していた可能性が高い。それを、彼女のファン、もしくはイタズラ心を抱いたユーザーがその画像を広めたことで、不可解なグレート・マウンテン・トロールの写真として知られるようになったと考えられる。
ネット上では、実在する作品に恐ろしいキャプションをつけた形で出回ることがたびたびある。それらの多くは、制作者が意図せずして広まっている場合が多い。おそらく、トロール写真も当初はだます目的で作られたものではなかったのだろう。一つの都市伝説が生み出される一端を垣間見える事例であるといえる。













