【山口敏太郎オカルト評論家のUMA図鑑#599】カワウソというと、コツメカワウソのような非常にかわいらしい姿を思い浮かべる人が多いだろう。かつては、日本にもニホンカワウソが全国的に生息しており、妖怪「カッパ」の正体の候補となるほどなじみ深い存在であった。

 近年では、アマゾン川に生息する体長140センチメートルにも及ぶというオオカワウソがメディアを通じて知られるようになり、イメージするカワウソとは打って変わって、その凶暴な目つきやその恐ろしい捕食の姿などを多くの人々の目に焼き付け、震え上がらせたのも記憶に新しい。

 そんなオオカワウソ以上に恐ろしい存在が、アイルランドに古くから伝わっているという。「ドアル・クー」という名のそのUMAは、アイルランドに伝わる凶暴な巨大カワウソと言われており、現地では「ボートに乗る者は人食いカワウソ、ドアル・クーに注意せよ!」という注意喚起の案内板も存在する。

 目撃情報によると、頭部60センチ、体長は2メートルを超え、異様な鳴き声にオレンジ色のひれ状の足で素早く泳ぐのだという。マクロス湖、ホイル湖、アキル島、オメイ島などで報告がなされており、人間や犬に対しては非常に攻撃的で、ペアやグループになって襲いかかるといわれている。

 名前の「ドアル・クー」とは、現地の言葉で「水の犬」の意味だ。アイルランドの歴史家であるロデリック・オフラハティが1684年に出版した「ア・ディスクリプション・オブ・ウエスト・コノート」にて、アキル島のスラヒーンズ湖で目撃されたという情報が初めての証言であると記述されている。

 また、ドアル・クーに襲われて犠牲になった人間の記録も残っているという。グレネードという街に住んでいたある女性が湖で洗濯をしていたところ、突然ドアル・クーに襲われてしまったのだ。叫び声を聞いた夫が現場に駆け付け、ドアル・クーの心臓を刃物で突き刺すと口笛のような音を出しながら動かなくなったが、その時にはすでに妻である女性も絶命していた。

 すると、湖からさらに複数のドアル・クーが現れたが、果敢にも夫はそれに立ち向かい、長い激闘の末に全て始末することができたのだという。グレネードには、このドアル・クーに襲われた女性の墓が現在も残っているそうだ。

 その後、20世紀後半になると、徐々にその目撃情報が多くなっていき、2003年には、マクロス湖の魚類生態調査にて、水深20メートルに魚の群れとは異なる影を観測した。そして、その翌年の2004年には、日本の映像制作会社の「UOOプロジェクト」にてマクロス湖におけるドアル・クー調査がなされ、ドアル・クーと思しき生物の写真が初めて撮影された。

 その正体についてはいくつもの説が唱えられているが、現地では通常のカワウソが多く生息していることもあり、それほどの巨大なカワウソが本当にいるのかと考えると疑わしいため、他の生物の誤認とする声もある。

 例としては、スコットランドのネッシーの幼体、流氷などによって生息地外に現れてしまったアシカ、三畳紀の恐竜コエロフィシスとする説まであるようだが、依然としてその正体は分からないままだ。