【山口敏太郎オカルト評論家のUMA図鑑#561】家畜を襲うUMAというと「チュパカブラ」を思い浮かべる人が多いだろう。ヤギなどの動物を襲って吸血する存在として非常に有名であるが、家畜を襲うUMAは他にも存在している。

「タンイーター」と呼ばれるその生物は、ホンジュラスに生息していると言われる怪鳥UMAである。その名称は文字通り「舌喰い」を意味しているが、「コメレンガス」という別名でも呼ばれることもある。

 大きなコウモリのような翼と長いクチバシ、鋭いカギヅメにライオンのようなタテガミをたくわえ、蛇のような長く太い尾を持っているという。そのフォルムは、まるで古代に生息していた翼竜を思わせるものとなっている。

 このUMAに関する報告は、郷土史家カレン・ダリエラ・ラモス氏とメリッサ・イザベル・バレンズエラ氏によって1966年に出版された「バイ・アカウンツ・ヒア・イン・ナカオメ:オーラル・リタラチャー・フロム・ザ・サウス・ゾーン」にまとめられている。

 1950年代、ホンジュラス南部のナカオメという地域で、何人かの農民たちが夜間の上空を飛行する巨大な鳥のような生物を目撃した。その翌日、数頭の家畜の牛が舌を引き抜かれた状態で死んでいるのが発見されたのだ。

 ある農民の目撃によれば、前日に見た空飛ぶ生物が雄牛を目がけて襲いかかり、その長く太い尾で牛を絞め殺し、最後には口の中にクチバシを突っ込み、舌を引きちぎって飛び去って行ったというのである。

 襲われた牛は、必ずと言っていいほど舌を根元から切り離され、アゴが脱臼した状態で死んでいた。多くの地主は、牛がいなくなってしまうのではないかと恐怖におののいたという。

 また、この事件よりも10年ほど前の1940年代に、この出来事と同様のケースがホンジュラスから数十キロ離れたブラジルのゴイアス州でも報告されている。さらに、ベネズエラのカラカス市サバナ・グランデでは、目の前を横切った動物や人間を貪り食う「ライオンバード」と呼ばれ恐れられた怪鳥の話が残っているそうだ。

 これらの怪鳥は、タンイーターと同様かあるいはそれと近い種ではないかとも言われている。この他、ネイティブアメリカンの神話に登場し、1970年代には襲撃事件が発生したとも言われている怪鳥「サンダーバード」と関係しているのではないかとされることもある。

 タンイーターの全長については7~10メートルと説明されることがあるのだが、家畜との比率で考えるとあまりにも大きさに差があり、舌だけを引き抜いていくというのはあまりにも現実的ではない。おそらくこれは、タンイーターの正体ではないかとして語られることのある、古代に生息していた最大級の翼竜「ケツァルコアトル」の体長に基づいた記述である可能性がある。

 タンイーターは1950年代から1960年代まで目撃され、のべ数百頭の家畜が襲われたと言われているが、その後は出没がぴたりとやみ、現在までに新たな目撃はなされていないという。

 だが、2017年、ホンジュラス北東部のオランチョ県の農村で、15頭ほどの牛が舌を切断された状態で死んでいるのが発見されている。タンイーターは今もどこかで、姿を見せずに生き残り続けている可能性があるのだ。