【昭和~平成スター列伝】50回目を迎えた東京スポーツ新聞社制定「2023年度プロレス大賞」の表彰が進んでいる。本紙1月25日付1面、26日付終面では、最優秀選手賞(MVP)を獲得した内藤哲也(新日本プロレス)と、23年2月21日、東京ドームで内藤と引退試合を行った武藤敬司の夢対談が実現した。

リング上で消火器を噴射するムタ。やりたい放題だった
リング上で消火器を噴射するムタ。やりたい放題だった

 武藤が代理人を務める“魔界の住人”グレート・ムタは、WWEの中邑真輔との奇跡の異次元マッチ(ノア1月1日、日本武道館)でベストバウトを獲得。ムタは意外にも初受賞となった。

 自身は3度のベストバウト獲得経験があるが、化身の初受賞を「あの試合は本当に奇跡が重なって実現した試合だったからうれしいよ。ムタもこれで心置きなく魔界にいられると思うよ」と率直に喜びを表現した。日本マット界にその名を刻みこんだ“魔界の住人”は、まさにムタらしく華々しい花道を飾った。ムタは中邑戦後の1月22日、ノア横浜アリーナ大会の6人タッグ戦でファイナルマッチを行い、魔界に戻った。 

 1987年にプエルトリコで誕生して全米で大人気を呼んだムタは、90年9月7日、大阪のサムライ・シロー戦で日本初登場を果たしている。意外なことだが、ムタは当時の最高峰であるIWGPヘビー級王座を武藤より先に獲得している。92年8月16日、福岡国際センターで長州力が保持していたIWGPヘビー級王座&グレーテスト18認定王座の2冠に挑戦。凶暴ファイトの末、王座を奪取して2冠王となった。

『ムタの毒霧がゴング代わりだ。緑色に染められた長州は目くじらを立ててつかみかかるが、ムタは場外へ。戻っても長州が向かってくれば再び場外へ逃亡。長州の怒りをあざ笑うような陽動作戦だ。しかし4度目にリングに戻った時、ラリアートが待っていた。ばく進する長州。しかし怒りのあまり勝負の読みを忘れていた。雪崩式ブレーンバスターに持ち込むが強引すぎた。抱え上げようとする瞬間、ムタは毒霧を発射。長州は天国から地獄に突き落とされた。ムタは場外へ誘導すると顔面をビールビンで一撃し、ブルドッキングヘッドロック。長州の顔面から鮮血が飛び散る。さらに鉄柵攻撃、イス攻撃とやりたい放題だ。こうなればあとは仕上げのみ。側転エルボーからムーンサルトへ。カウント2・9で返した長州だが、2発目を返す余力はない。ピクリとも動けず11分26秒、勝負は意外なほどアッサリと決着がついた。試合後、長州は「完敗だ」とポツリ。足踏み状態が続いていた新日プロの世代交代。ついに時代の扉がこじ開けられた』(抜粋)

 武藤に先駆けてこれが闘魂三銃士では最初のIWGP王座戴冠となった。この時期のムタはやたら雄弁で「言った通りのことをやったんだ。それより写真をバシバシ撮れ。チャンピオンだぞ、オラ!」と報道陣にすごんだ。90年代はペイントだったが00年代以降、SFX的ラバーマスクに変身すると怪奇さと迫力は倍増し寡黙となった。

 ムタはその後、何度か封印を繰り返すも米国や全日本、ノアでも暴れまくり、プロレス界の別格的存在となった。世代交代を証明したIWGPヘビー級王座奪取から30年以上も疾走を続け、中邑とのドリームマッチまで実現させたムタ。誰もが心を躍らせた“魔界の住人”は永遠の存在である。 (敬称略)