虎将にさらなる栄冠だ。阪神を38年ぶりの日本一に導いた岡田彰布監督(66)が掲げたチームスローガン「アレ(A.R.E.)」が1日に「現代用語の基礎知識選 2023ユーキャン新語・流行語大賞」の年間大賞に選出された。12球団最年長指揮官はセ・リーグのDH制だけでなく、実はピッチクロックの導入にも反対の立場をとる球界の〝保守本流〟。自身の指導者としてのキャリアが残り少ないと自覚しているからこそ、愛する猛虎と球界に残したいものとは――。

「優勝」をあえて隠語にした「アレ」が流行語大賞に選ばれたことを受け、岡田監督は東京都内で行われた表彰式に出席。「まさかここまで周りに影響力を与えることができるとは思わなかった」と笑顔を浮かべながら充実感と達成感に浸った。

 岡田監督の座右の銘は「道一筋」。人からサインを頼まれた際には、必ず色紙にこの3文字を記している。だがこの日、司会者から「来季は『アレ一筋』ですね」と水を向けられると、虎の指揮官は襟を正してこう語った。

「僕は大阪生まれの阪神ファンで、実家に村山実さんの『球道一筋』と書かれた色紙が置いてあった。2004年に監督になって村山さんの文字をもらおうと思っていたが、監督1年目で全ての文字をもらうのは失礼になるので『道一筋』にした。日本一になって認められたら、上の『球』の字をもらおうと。『球』という字は王へんに求める。『王の道を求める』となる。日本一になれたので来年1月1日からは憧れのレジェンドOB村山さんにあやかって『球道一筋』の座右の銘を使いたい」

 プロ通算222勝を挙げた村山実さん(故人)は、2代目ミスタータイガースと呼ばれたタテジマの象徴的存在だ。1973年3月の引退試合直前には、肩慣らしとしてキャッチボールの相手を当時中学3年生だった岡田少年が務めたという縁もある。

退任する村山実監督(左)と握手する現役時代の阪神・岡田監督(1989年)
退任する村山実監督(左)と握手する現役時代の阪神・岡田監督(1989年)

「王道」の2文字が誰よりも似合う指揮官だ。セのDH制導入に「監督が楽すぎるわ」と一貫して反対の立場。その言葉の通り、相手の投打の事情を読み切った上で、試合中盤から救援投手を効果的に野手の打順に組み込む巧みな用兵で何度も接戦をもぎ取ってきた。

 さらに、すでに米球界などでは導入されているピッチクロックに対しても「アカン。俺は反対や」と明かす。「そんなんオマエ、けん制の球数すら制限されるんやろ」。プロ野球が興行である以上、商業的な「時短」の必要性も確かに考慮しなければならない。だが、長い時間をかけ磨かれてきた投手と打者、投手と走者の〝間〟を巡る攻防も野球の醍醐味の一つだ。

「4手、5手先まで見通す」と評される洞察力でファンだけでなく評論家、現役選手まで何度もうならせてきた虎のカリスマ指揮官。村山さんの話を受け「今後自身がチームや選手たちに残したいものは?」と問われると「現役の時には分かれへんって。俺もユニホーム脱いでからやもん。指導者になってOBとかと付き合うようになってからやな。タイガースの歴史ってものはな」と達観しながら笑った。

「考えたらみんな亡くなっているんやな。ブレイザーも中西さんも。(中村)勝さんやろ、野村さんも星野さんも…」と歴代の虎将に思いをはせた66歳の老将。チームと球界の未来を背負い、来季も戦いに臨む。