楽天・松井裕樹投手(28)が8日に本拠地・楽天モバイルパークで会見を行い、海外FA権を行使してメジャー移籍を目指すと表明した。FA選手は15日に公示され、MLB球団との交渉が開始される。通算236セーブ左腕にはカージナルスやパドレス、カブスに先日、球団創設63年目でワールドシリーズを初制覇したレンジャーズも興味を示しており、争奪戦の様相を呈している。一にも二にも松井裕の成功のカギは〝トラブルへの対応力〟となりそうだ。
会見冒頭で松井裕は「今季取得した海外FA権を行使することを報告させていただきます」とあいさつ。MLB挑戦に至った経緯について「田中将大さんと自主トレをさせてもらって少しでも近づきたいと思って毎年、毎年刺激を受けた中で気がついたら、そういうふうになっていた」と語った。
初めてFA権を行使し、チームを選定する基準に関しては「自分からチームを選ぶのは初めてなので僕だけでは判断できないことはあると思う。いろんな人の助言をいただいて一番頑張れる、力が発揮できる、成長できるところに行けたらいいなと思います」とした。
一方で、メジャー側の松井裕の評価は「ただでさえ絶対数が少ない左の好投手で中継ぎ以降のリリーフ左腕の好投手はさらに限られてくる。NPBで実績を残した先発の今永(DeNA)、松井は山本由伸(オリックス)という市場の目玉とは違って多くの球団が手を出しやすいという点で争奪戦になりやすいと思う」(ア・リーグ球団スカウト)と非常に高い。
日本に駐在スカウトを置くカージナルス、パドレス、カブス、そして創設63年目で初のワールドチャンピオンに輝いたレンジャーズなどがシーズン中から詳細なリポートを米国の球団本部に送っており、虎視眈々と左腕の動向を追っていた。
ともあれ、メジャー1年目の目標を「ケガをせずに年間を通してチームに貢献することが最低限」という松井裕だが、新天地で成功のキーポイントとなるのは何と言っても今春のWBCで相性の悪かった〝MLB球〟への対応となる。
WBCで米ローリングス社製のMLB公式球が使用されているのは、周知の通り。WBC本番直前の壮行試合・中日戦(3月3日・バンテリン)に侍ジャパンの3番手として登板した松井裕は〝WBC球〟が手につかず1回途中2安打3四球4失点と制球に苦しみ、28球で乱調降板に追い込まれている。
この日の試合後、松井裕は「うまいこといっていない。ボール(への対応)から始まって、ちょっとズレが出てきて、いろいろなことを気にしてしまって全体としてフォームの流れとかが良くなくなっている」と述べ、苦悩を明かしていた。
アジャストできず腐心し続けていた左腕の姿をメジャースカウトの1人は「カーブ、スライダーといった〝滑らし系〟の変化球を決め球とする投手に起こりやすい変化幅の調整トラブル」と分類し、次のようにも分析していた。
「NPB球と同じ感覚で投げると縫い目の高さ、指への掛かり具合や革質の違いなどから変化幅が大きくなり過ぎる。それを過剰に意識し過ぎると普段使わない神経や筋肉を緊張させてしまい、投球全体のバランスが狂ってしまう」
その対応策について同スカウトは左腕・松井裕の〝救済サンプル〟となりそうな過去の事例を挙げ、こう助言も送った。
「例えば同じ左腕の岡島(秀樹)の場合、07年に移籍したレッドソックスのキャンプで持ち球のカーブが滑ってしまい、全く制球できずにいた。これはマズいと工夫を重ね、自身の特徴であるそのカーブを捨て、フォークボールに近い握りから打者の手元で微妙に落ちるチェンジアップに活路を見いだし、ブルペンでの地位を築いていった。そういう変化と工夫は絶対に必要になってくる」
松井裕にとって生命線である2種類のスライダーが、もしもMLBで手につかない場合は…。それを補う工夫や変化といった対応力が求められてくることになる。












