さあ、王手や! 阪神は2日の日本シリーズ第5戦(甲子園)でオリックスに6―2で逆転勝ち。対戦成績を3勝2敗とし、球団史上2度目となる38年ぶりの日本一まであと1勝とした。決勝打をマークしたのは大卒ルーキーの森下翔太外野手(23)だ。しくじってもベソをかいても、何度も自身のバットで挽回してきた背番号1には、岡田彰布監督(65)以外にも〝教育係〟がいるとのことで…。
〝アホの子〟が打った。この日、涙を流したのは65歳の老将のほうだった。
近本の右前適時打で1―2の1点差に迫った8回。なおも一死二、三塁とし4打席目に立ったのは二ゴロ、遊ゴロ併殺、二飛の3タコとまるでいいところがなかった森下だった。7回の右翼守備では痛恨の適時失策を犯し、敵軍に2点目をプレゼントしてしまったばかりだった。
それでも虎の若き3番打者は「エラーした奴にチャンスで打席が回ってくるのが野球。取り返したいという思いしかなかった」と試合後に振り返る。カウント2―2からファウルでしぶとく粘り、7球目の低めの直球を捉えると、白球は左中間を深々と破る長打コースへ。走者一掃の逆転2点適時三塁打となり、頭から滑り込んだ森下はこぶしをベースにたたきつけ、何度もほえた。
その直後、テレビ画面に映し出された岡田監督の目は真っ赤に充血していた。「ゴロゴーやったからな。あそこは。あんなええ当たり打たんでいいのにな。おーん」。試合後の監督囲みでは、毒づきながらも若武者の挽回の一撃をたたえた。
シリーズ第2戦終了時の森下の打率は1割1分1厘。結果を残せなかっただけでなくエンドランのサインでフライを打ち上げてしまうミスなどもあり、岡田監督からは「交代させたろかと思ったけどな。また泣いたらアカンから辛抱したよ」と容赦なくイジられていた。第3戦からは打棒も復調し、これで3試合連続の打点。守備でしくじったこの日も、持ち味とする長打で最終的にはヒーローになった。
「まだ1年目。最初は野球の教育からやな。親が子供に教育しているのと一緒や」とも岡田監督は語る。球界最高レベルの野球脳の持ち主のもと、日々目覚ましい成長を遂げる背番号1だが、実はチーム内にはもう一人、森下の〝教育役〟がいる。それが日頃から行動をともにすることが多い盟友・小幡竜平内野手(23)だ。
2018年のドラフト会議で高卒選手として2位指名された小幡にとって、その4年後に大卒で阪神入りしてきた森下は、自身にとって初となる同学年の支配下野手。気がねなく接することができる「タメ年」だけに小腹が減れば、甲子園球場近辺の庶民的な店などにも連れだって足を運ぶことも多いという。「顔バレは…。ギリで大丈夫っすかね(笑い)。アイツは〝アホの子〟なんで僕がちゃんと一緒にいてやって〝教育係〟をしてやってるんですよ」と小幡はニヤリと笑う。
野球の技術以外にも球界やチーム内のしきたり、約束事など学ぶべきことは多いのだろう。遊撃の定位置奪取を狙う小幡は「アイツは1位で入団してすぐにレギュラーになって活躍してる。僕にとっても本当に刺激になる存在です」と相棒への思いを口にする。
森下、小幡以外にも戸郷(巨人)、小園(広島)、仲地(中日)ら有望な才能がひしめくミレニアム世代。一足先に悲願の頂点を自らの手でつかんでみせる。












