やはり標的は王道だった。28日にプロレスリング・ノアでの「ラストマッチ」を終え、フリーとして正式始動した〝蹴撃王〟こと中嶋勝彦(35)が31日、全日本プロレス事務所に踏み込み「会見」を開いた。
本紙紙面で「31日にちょっと動きたい」と予告していた中嶋が、当日集合場所に指定したのは都内の全日本の事務所が入るビルの下だった。自らが指定した時刻に1分遅れて悠々と姿を見せると、「じゃあ、行こうか。俺、知らないから案内してくれよ」と報道陣を促しエレベーターに乗り込む。目的階に着くや「ここか…」とつぶやき、そのままノックもせずにドアを開け、ずかずかと侵入した。
事務所では全日本のスタッフが、ささやかなハロウィンパーティーの準備をしていた。中嶋は、招かざる客の襲来に驚くスタッフを追いやるとそのままイスに座り「ここで会見を開く理由は一つだ。全日本プロレスを乗っ取りに来た。そのためにまず、全日本プロレスの至宝である3冠をいただく」と宣言した。他人の敷地に勝手に踏み込んで占拠したあげく「会見」とは…。さらに傍らで凍り付く全日本・福田剛紀社長をにらみつけると「福田社長! 全日本プロレスに〝闘魂スタイル〟のこの中嶋勝彦が挑戦表明だ。組んでくれるよな?」と恫喝しつつ、3冠ヘビー級王者・青柳優馬への挑戦を表明した。
ハロウィンパーティーの準備中で緑色に「L」と書かれた帽子をかぶった福田社長は、「そうおっしゃられても急には…。チャンピオンの青柳選手に聞いてみないと、今は何とも…」と困惑するばかり。それはそうだろう。さすが社長。常識人だ。ところが暴君状態の中嶋は「急でも何でもないだろ。知ってるよ。チャンピオンの青柳。先日も最高の男、宮原健斗を破って防衛したもんな? 俺が、そのチャンピオンに勝てばいいんだろ?」と〝ノー〟を許さない。
「まあ…」と言いよどむ福田社長をヨソに「次はどこだっけ? 11月5日、北海道だったよね。いいじゃん。行ってやるよ。挑戦表明だ。全日本プロレスをジャックしてこの俺、中嶋勝彦がプロレス界の地形ごと変えてやるよ」と11月5日のホテルエミシア札幌大会の夜興行での挑戦を勝手に〝決定〟。ぼうぜんとする福田社長に「社長、なんでルイージなんですか? メチャクチャ面白いですね。ハッピーハロウィン」と言葉を送り会見を終了させた。
その後、我を取り戻した福田社長は「他団体を辞めてすぐうちにきてくれたことには感謝しています。青柳選手が受けてくれるか、確認します」と心の広いコメント。しかし21日の後楽園ホール大会に〝アポなし〟で登場して、宮原を花束で殴打した騒動に続く傍若無人な振る舞い。「ただ、3冠の歴史の重みを知って来てくれているかは疑問があります。今までそう言うやり方で活動してきたのかもしれないですが、全日本ではそうは問屋がおろしませんよ」と怒りも覚えている様子だった。