プロ入り見送りの判断に、複雑な胸中がにじんだ。26日のドラフト会議を控え、ソフトバンクは20日にペイペイドームでスカウト会議を開いた。1位候補は補強ポイントの投手を中心に5人程度に絞り込まれ、青学大・常広羽也斗投手、大阪桐蔭・前田悠伍投手らの評価のすり合わせを行ったとみられる。次回24日の会議を経て、他球団の動向次第で事前公表の可能性も確認された模様だ。

 鷹の心をくすぐった大砲の名前は、リストには入っていなかった。歴代最多の高校通算140本塁打を誇るも、プロ志望届を提出せずに米国の大学へ進学することを表明した花巻東・佐々木麟太郎内野手だ。天性の長打力を秘めた18歳は、紛れもなく〝鷹の恋人〟だった。これまでフロント幹部に加え、育成編成面でチームを支える城島健司球団会長付特別アドバイザーが直接視察する熱の入れようで成長を確認。他球団との「競合覚悟」も視野に、早い段階で米国行きの可能性を把握しながらも動向を注視していた。

「遠くに飛ばす能力」はかけがえのないものだ。鷹の熱視線からも分かるように、他球団を含めたプロ側の佐々木への評価はすこぶる高かった。チーム事情が許せば、ロマンある大砲の人気はがぜん集中したはずだ。

 ソフトバンクの補強ポイントはこの日、王貞治球団会長が明示したように「投手」。佐々木がプロ志望を表明していれば、悩ましい判断を迫られる立場だった。スカウト会議に出席した編成担当者の間からは「アメリカの大学に行くとなって、ホッとした部分もあった。チーム事情的に投手を見送って獲りにいくとなれば、賛否は避けられなかったはず」との声が異口同音に漏れた。

 今年のドラフト候補は、とりわけ大学生を中心に投手に好素材がそろう。プロの編成は3年先、5年先を見据えて行うもの。補強ポイントに目をつぶってでも獲りたかった球団があれば、余裕がある今年だからこそ獲りたかった球団もある。ソフトバンクに限らず、佐々木麟を高く評価してきた球団は同じように複雑な思いを抱いているはずだ。

 長所を見失わず、スケールの大きな打者に育ってほしい――。NPB球団は海を渡る18歳に温かい視線を送りつつ、その成長を見守っていく。