機は熟したのかもしれない。今季、至上命令だった3年ぶりのリーグ優勝を逸してパ3位に終わり、ポストシーズンも早期敗退に追い込まれたソフトバンク。覇権奪回どころか、低調な戦いに終わった要因の一つは先発陣の不振だった。常勝復活の礎となるのが、強力な先発ローテーションの構築。入団以来ブルペンを支えてきたリバン・モイネロ投手(27)の先発配置転換の可能性が高まっている。

 今季のソフトバンクは12球団で唯一、規定投球回到達者がゼロに終わった。2枚看板として期待された石川が4勝、東浜が6勝にとどまり、5月から一軍に昇格した有原が唯一の10勝をクリアした。

 昨季まで絶対エースに君臨した千賀がメッツに移籍。大きな穴は埋まらないばかりか、軸となる投手が少なかったせいで安定した戦いを欠く一因となった。今季限りで退任が決まった藤本博史監督(59)は、シーズン総括の中で「先発投手のところがレベルアップしていかないといけない。パ・リーグの投手は全体的にレベルが上がっている。ウチの投手たちが悪いわけじゃないけど、パ・リーグの投手が全体的によくなっているところを考えると、ウチもレベルアップしないといけないと感じた」と率直に振り返り、来季以降の戦いに強い危機感をのぞかせていた。

 千賀のメジャー挑戦で苦戦が想定されていた昨オフ、一時は見送られた一大プロジェクトが現実味を帯びている。2017年のデビューから通算306試合すべて中継ぎ登板で、NPB屈指のセットアッパーに君臨してきたキューバの至宝・モイネロの先発転向だ。

 今季は3月にWBCが開催され、母国代表のリリーフエースを務める使命感から調整面などを考慮して配置転換を自らの意思で控えたが、今オフは状況が整っている。7月に左ヒジを手術するも、順調にリハビリプログラムを消化して9月にキューバに帰国。シーズン途中離脱の悔しさを胸に、来季こそのV奪回に向けてひと足早いオフのトレーニングに励んでいる。

 かねて球団内には左腕の「先発適性」を認める声が多かった。何より今オフのチャレンジにモイネロ自身も意欲を示しているという。「準備期間があることとチーム事情から(先発転向を)求められれば、その可能性は十分にある」(チーム関係者)。先発の軸を託せるだけの有能な新外国人投手の獲得やドラフトの成否、小久保裕紀二軍監督(52)の内部昇格が決定的な新体制で、守護神・オスナの去就などを含めた最終判断にもよるが、強力な再建策の一案としてキューバの至宝がスタンバイ態勢にあることは心強い。

 かねてチームへの忠誠心がすこぶる強いモイネロ。覇権奪回へ再スタートを切る新生ホークスにあって、今オフ最大の注目ポイントとなりそうだ。