阪神・佐藤輝明内野手(24)はプロ3年目にして初となるリーグ制覇に喜びを爆発させた。

「いや、もう間違いなく、僕史上で一番最高な日です。もう最高ですね。それだけですね」と興奮気味にまくしたてた背番号8は、この日(14日=巨人戦)もペナントを手元に引き寄せる大きな20号2ランを放った。それでも「とりあえず、きょうは個人のことはどうでもいい。勝ったことがうれしいので。もういいっすよ。個人のことはね」と笑みを浮かべ、アレの感慨に浸りきった。

 強心臓を持つ男も1球の怖さを知るひと幕があった。3年目の大砲は今季、期待された打撃面で開幕から苦しんだ。8月以降に復調したものの、本人は満足はしていない。

 守備では昨季まで主に右翼手としてプレーしていたが、三塁のレギュラーになってからは実質1年目。送球面で悩むことが多く、今も改善に取り組む日々だ。打席での凡退は自分の〝未熟さ〟として完結できても、守備のミスはチームの痛手に直結する。

 それを何度も味わったからだろう。ベンチで「今までの野球人生で一番、緊張しました」と吐露したシーンがあった。

 7連勝を飾った8月10日の巨人戦(東京ドーム)。近本の勝ち越し2ランなどで7回までに3―1とリードしたが、先発・才木が8回に1点差まで迫られた。ここで岡田監督は決死の一人一殺継投。加治屋、島本を動員して二死二、三塁とし、一打逆転の危機で代打・岸田の打球は三塁を守る背番号8のもとへ転がった。

 これをしっかりとさばいた佐藤輝は一塁に送球してアウトにし、最大のピンチを脱した。前日まで2連投し、計39球の熱投を見せた守護神・岩崎をベンチ外とした一戦。仮に8回の時点で同点に追いつかれれば、先攻だったチームは形勢が一気に不利になることをベンチの誰もが分かっていた。

 万が一にも一塁への送球がそれていたら…。ナインにハイタッチで迎えられた佐藤輝は思わず胸中を吐き出したのだった。普段はチーム内でも何ごとにも動じない「マイペースキャラ」として通っていただけに、そんな男が放った〝まさか〟のひと言に周囲は大爆笑。ナインや首脳陣から「オマエでも緊張するんかい!」と総ツッコミを受けた。

 結果的に、9回に代打・原口の2ランで突き放して快勝したが、佐藤輝をもってしても8回のヒリヒリとした緊張感に支配されていたわけだ。

 シーズン終盤に岡田監督から「曲がりなりにも一生懸命やっとる」と数少ないお褒めの言葉を引き出したのも、攻守に常にガムシャラな姿を見せ続けたからこそ。決して順風満帆ではなかった「アレ」への道のり。その経験は今後の野球人生でも血肉になるはずだ。