日大アメリカンフットボール部の違法薬物問題で、裏社会を描くフィクション・ノンフィクション作家の草下シンヤ氏(44)が〝実名報道〟について問題提起した。草下氏は、一般人が容易に薬物を入手できる現状を説明。犯罪であることはたしかだが、今回の日大の件では報道が過熱しすぎている点を懸念する。アンダーグラウンド事情に詳しい草下氏が、若者の将来を憂慮してあえて報道の現状に異議を唱えた。
警視庁は、5日に3年生部員1人を覚醒剤取締法違反および大麻取締法違反の疑いで逮捕。その後さらに複数の部員の関与が強まり、22日には寮を再捜索するなど騒動は収まりそうにない。
そうした中、2003年に自身の体験に基づく「実録ドラッグ・リポート」で作家デビューし、違法薬物や暴力団といったアウトローな世界を取材し続けている草下氏が取材に応じた。
まず草下氏が指摘するのが、日本における違法薬物の実情だ。SNSでは違法薬物関係の隠語である「野菜」「手押し」(大麻、手売りを意味する)と入力すると、関連すると思われるアカウントがヒットする。たとえば大麻の値段は「大学生もお小遣いぐらいで買える」と草下氏。違法薬物は容易に入手できるのが現状だ。
今回の事件では、少なくともOBを含む10人程度が使用を認めたとみられる。草下氏は「大麻であっても逮捕されてしまったり、(薬物と)反社会的な人との付き合いは深くあるから、人生が破滅する可能性は大いにある」とリスクを強調する。
違法薬物が犯罪であることは間違いない。ただ一方で、草下氏は今回の問題に対する〝メディアスクラム〟を危惧する。
「林真理子さんが理事長で、話題を集めるからマスコミが躍起になっている。報道するのはいいけど(逮捕された部員の)名前は出さないほうがよかったのでは」と実名報道に疑問を呈した。
すでに逮捕されている部員は成人しており、実名で報じることに問題はない。とはいえ「本人が更生しようとしても、ネット上で名前を検索すれば顔まで出てくる。強姦(強制性交罪)、殺人とか公的危害を加える可能性がある犯罪なら、他の被害を減らすためにも仕方がない部分がある。だけど、今回の薬物事件で大学生の将来を閉ざすのはどうなのか」と主張する。逮捕された学生は21歳であり、今回の問題が解決した後の人生を考慮すると、社会的制裁が重過ぎることで更生の道が閉ざされることを懸念しているのだ。
草下氏は10日に自身のX(ツイッター)でも「こんなデジタルタトゥーが残ったんじゃ、その後の人生どうなるの?」と投稿し、大きな反響を呼んだ。「賛成する人もいたけど、自業自得でしょという人もいた。あまりさらし上げたり、潰すような社会になるのはよくない。もう少しメディアは自制してもいいのでは」と報道のあり方を見つめ直すよう呼びかけた。過熱する日大アメフト部の問題に一石を投じることになるか。












