【柏原純一「烈眼」】阪神は約1か月守ってきた首位の座を広島に明け渡した。勝負事である以上、喜んでいい負けなどはないが、やってはいけないミスが多く出た27日の巨人戦での敗戦は、ある意味では〝戒め〟としてすぐに生かせる敗戦と思っている。それは選手たちが最も痛感しているはずだ。

 改めて感じたのは「1球の怖さ」。2―3の5回二死、岡本和の平凡な飛球を遊撃・木浪が捕球できず。もちろん、どんな名手にもミスは出る。守備面ではとくに、誰かのミスを誰かがカバーできていたからこそ、今季の阪神の守備は周囲から評価されていたはず。ところがこの日は〝連鎖〟となった。

 先発・才木は直後の大城卓を四球で歩かせると中田翔、長野に連続適時打を浴びて瞬く間に3失点。長野の右中間への一撃は右翼・森下が、初動の打球の追い方を誤っており、これも記録に表れないミスだ。2番手・馬場も投手の戸郷にこの日2本目の安打を許した。これだけ防げる類のミスが噴出すれば、大量失点となるのも仕方がない。投手、野手問わず、あらゆるマイナスが積み重なった。

 ただ、悲観する必要はない。むしろ、これが今季89試合目だったことをプラスに捉えるべきだ。悪いホコリが数多く出たことで、次カードの広島との首位攻防3連戦は全員が気を引き締めて臨むことにもなるだろう。

 そう確信できたのは、チームのキーマンである近本、中野の1、2番コンビが大味な展開となった終盤にピリッとした姿を見せたからだ。内野の要でもある中野は7回の二塁守備で一死二塁から打者・戸郷の飛球を背走キャッチ、飛び出した二走をアウトにする美技で併殺を奪うと、その裏の攻撃では近本、中野の連続適時打で3点をかえしてみせた。4回に一時は同点弾となる一撃を放った4番・大山や8回に中堅に一発を放り込んだ佐藤輝もしかり。上位打線は求められる役割で「爪あと」をしっかり残していた。

 あと必要なのは、攻守の全ての局面で一球一球をつなぎ、流れを引き寄せるチームとしての集中力。10連勝と破竹の勢いの広島との頂上決戦も、当たり前のことを当たり前にできれば、普通に首位を奪還できるはずだ。

(野球評論家)