先月28日に死去した音楽家の坂本龍一さん(享年71)の“遺言”に注目が集まっている。世界のサカモトだけに各界でその死が惜しまれているが、社会活動においても坂本さんの存在は大きかった。最近では東京・神宮外苑再開発に反対していたことで知られ、小池百合子東京都知事らに再開発見直しを求める手紙を送っていた。その遺志を継ぐという人もいるが、今後再開発に影響はあり得るのか。

 神宮外苑再開発では多くの樹木が伐採されることに反対の声が上がっていた。坂本さんも反対しており、小池氏らに送った手紙には「目の前の経済的利益のために先人が100年をかけて守り育ててきた貴重な神宮の樹々を犠牲にすべきではありません」「いま世界はSDGsを推進していますが、神宮外苑の開発はとても持続可能なものとは言えません」「あなたのリーダーシップに期待します」などと訴えが書かれていた。

 坂本さんの思いに応えようという人たちもいる。元ラグビー日本代表で再開発に反対している平尾剛氏はツイッターで「闘病のなか、神宮前再開発に反対の意を果敢に表明したその遺志を、僕なりに引き継ぎたい」と記した。反対の署名活動をするロッシェル・カップ氏は「『明治神宮外苑の再開発見直しを求める書簡は遺言』と言われています。その遺言が実現されるように努力致します」とつぶやいた。

 再開発に反対をしている「自由を守る会」代表の上田令子都議は坂本さんの手紙に対する小池氏の反応を批判した。小池氏は「ぜひ事業者でもある明治神宮にも送られた方がいいのではないか」と答えていた。

「世界の坂本さんに対してリスペクトが感じられません。再開発にOKをしたのは小池氏です。都民の代表として事業者に注文をつけることはできたのではないか」(上田氏)。坂本さんの死により、神宮外苑再開発に今までにない注目が集まっているが、小池氏の言う通り、再開発の事業者は都ではなく明治神宮、三井不動産など民間だ。

 計画では神宮球場と秩父宮ラグビー場を建て替えるほかに、高層ビルの建設も予定されている。有名なイチョウ並木は残る方向だが、多くの樹木が伐採される。都は2月に施工を認可した。

 都庁関係者は「『知事のリーダーシップを』と言うが、そもそも都は許認可権だけで、民間でやる事業の内容は都で決められない。仮に知事が中止にしようものなら事業者から訴えられかねないでしょう」と話した。

 すでに着工されている段階で、再開発に反対する人たちは何ができるのか。前出の上田氏は「事業者側にも働きかけるつもりです。良識に訴え、計画を変えてもらいたい」と話した。

 5日には反対を訴えるサイレントデモが神宮外苑で行われる予定となっている。神宮外苑再開発について知る人が増加しているなか、果たして樹木はどうなってしまうのか。