侍ジャパンが第5回WBCで3大会ぶりの世界一に輝いた。大会MVPとなった大谷翔平投手(28=エンゼルス)を中心としたドラマのような戦いぶりは、日本のみならず、世界を興奮させたが、そんな〝祭りのあと〟に、本紙専属評論家の伊原春樹氏は「思うこと」があるという。大会を通して感じた日本、米国、韓国の「レベルの差」と、大会後の栗山英樹監督(61)の去就問題についても指摘した。
【新鬼の手帳・伊原春樹】まずは本当におめでとう。興奮して見ていました。日本の野球の素晴らしさを証明してくれ、日本の野球人として誇らしい思いでいっぱいです。
戦前、1次ラウンドは韓国相手に苦戦するかも…と思っていましたが、韓国の力は相当に落ちていましたね。それと同時に日本が力をつけ、強くなっていたからこそ一方的な試合になった。逆に楽な戦いをしすぎたせいで、米国に行ってからの準決勝、決勝が心配になったぐらい。実際、準決勝、決勝ではしんどい試合になりましたが、そこではしっかり、日本野球の真骨頂を見せてくれたと思います。
もともと日本の野球は緻密さと団結力が売り。そこにパワーがついてきて、純粋なパワーだけの勝負でもメジャーリーガーたちとも十分わたりあえる選手が揃ってきた。大谷はもちろんのこと、野手で言うなら村上(ヤクルト)、岡本(巨人)のパワーはメジャーの選手にも見劣りしないし、体格で劣る吉田(レッドソックス)の鍛え上げ、磨き上げられたスイングも見事だった。ほとんどの投手の球速は150キロを超え、160キロを超える佐々木朗(ロッテ)だっている。パワー勝負でそん色ないんだったら、野球の緻密さで上回る日本が負けるわけがない。決勝の米国戦は、そんな思いで見ていました。
実際、決勝戦での米国代表のプレーは日本では考えられないプレーの連続でした。まずはヌートバーの内野ゴロで勝ち越し点が入った場面。2回一死満塁から一塁ゴロの間に点が入るわけですが、相手の一塁手は一塁ベースの後ろに守っていた。
あの場面の内野守備陣形の基本は強いゴロならセカンドゲッツー、緩いゴロならホームでフォースアウトを狙える位置に、ということで二遊間は塁間を結んだ「線上」、一、三塁手はベースの横あたりに守ります。それをせず、あっさり勝ち越し点を献上したわけで、日本をナメていたのか、守備陣形を選手もコーチも知らないのか…。「こういうところが雑なんだよな」という象徴的なシーンでした。
山田(ヤクルト)に2つ盗塁を決められたのも、米国の投手がクイックができず、足を高く上げて投げていたから。日本なら走者が出たら「足を高く上げるな」と、少年野球でも指導しますよ。村上が初球攻撃で打った同点本塁打だってそう。前の試合で村上が初球から振りに行った末の逆転サヨナラ打を見てないんでしょうかね。「初球の入りは気をつけよう」と、捕手もベンチも思わない。メジャーも最新機器でクセや配球を研究しているという話も聞きますが、それは一部の話で、実際にはまだ低いレベルにいる野球人が多いということです。
それでも米国代表は「投手陣がベストではなかった」ということを敗因に求めているようですが、日本だって千賀(メッツ)は出ていないし、森(オリックス)や平良(西武)が出ていたら、もっと強い。そこはお互い様でしょう。今回の結果で「日本は米国を上回った」とまでは言いませんが、だいぶ距離は縮まった。米国が今回の敗戦を真摯に受け止め「日本の野球の素晴らしいところを取り入れよう」となればいいんでしょうけど、そこまで謙虚にはなれないかもしれませんね。
そして、最後に栗山監督に一言。最初は「自分が監督でいいんですか?」ということも言っていたけど、今回のWBC優勝は、栗山監督でなければできなかったと思います。選手集めから何から本当に苦労されたと思うし、チームをよくまとめ、日本ならではの「団結力」を発揮してくれた。是非とも次回WBCも栗山監督でお願いしたいし、誰もがそう思っていることだろう。
それだけに…。優勝が決まったあと「辞意」を示唆したことで、再三、辞意を漏らしながらも続投した日本ハム監督時代を思い出してしまった。「駆け引きもなかなかですな」と。












