侍ジャパンが第5回WBCで準々決勝進出を決めた。4戦全勝で勝ちぬけたその1次ラウンドで、本紙評論家の伊勢孝夫氏が「最も残念だったプレー」があるという。日本が13―4で大勝した10日の韓国戦(東京ドーム)、大谷翔平投手(28=エンゼルス)が、顔色を変えたあの打席のことだ。
7回裏、日本の攻撃。一死満塁で打席には大谷。スコアは11―4。満塁本塁打が飛び出せばコールドゲームが成立する状況だった。
満塁なら勝負するしかない。マウンドには若手左腕のイ・ウィリ。ボール、ボール、空振り、ファウルでカウントは2―2。ここで5球目の変化球がワンバウンドとなり、捕手は後逸(記録は暴投)。1点が入ってなおも一死二、三塁に状況は変わった。
単打でもコールド。カウントはフルカウントになり、一塁は空いている。私は「これは歩かされるな」と思った。大谷もそう思ったことだろう。しかし、捕手は座ったまま、申告敬遠はなし…。
「おっ、勝負をしてくれるのか」と思うと同時に、違和感を覚えた。打席の大谷は投手の表情がよく見える。私以上の「予感」があったはずだ。戦前には韓国投手の「故意死球発言」もあった。だからこそ次の一球、体に向かってきたボールを見事に避けることができたのだろう。打者はフルカウントなら踏み込んで打ちに行く。実際、捕手は外角に構えていた。予想していなかったら避けるのは無理だった。
あれはさすがに野球人なら誰でも「それはないだろう」と感じる一球だった。一塁が空いたあの場面、そこまでの試合の流れや後続の打者のことを普通に考えれば、大谷との勝負はない。「どうせ歩かせるのなら、ぶつけてもいいか」という思惑が透けて見えるあの一球は、常にアクシデントと背中合わせでプレーをしている、プロ野球の選手としては、許されるものではない。大谷の表情が険しくなったのも当然だ。身構えていたところに予想通りのボールが来たのだから。
野球に死球はつきもの。この試合の6回に死球を受けたヌートバーが怒りをあらわにしていたが、あれは狙っていたわけではないだろう。ただ、投手が「申し訳ない」という態度をとっていれば、相手をそこまで怒らせることはなかったのではないか。
そもそも韓国野球はアメリカ野球のいいところも悪いところもお手本にしているから、死球を与えても帽子をとって謝ったりはしない。逆に「かかってこい」ぐらいに指で手招きする投手もいるほどだ。そういうところで相手の感情を逆なでしたところで、得することは何もない。
韓国選手では二塁打を打った選手が喜んでベースから足を離してアウトになったプレーもあったが、私は「大谷へのあの一球」が、最も残念なプレーだった。













