【グラゼニ球論・金村暁】WBC日本代表では伊藤大海投手(25=日本ハム)に注目しています。沖縄・名護キャンプでブルペンや練習試合など計3度、投球を見せてもらいました。

 多くの投手がそうだったように、彼もWBC球の扱いに試行錯誤を繰り返していました。NPB球との違いについて聞いてみると、最も感覚の難しさを感じたのが「真っすぐ」だそうです。具体的には「ボールに人さし指と中指で均等な力が加わらないと全部、ツーシームのように勝手に球が動く」とのこと。NPB球であれば多少、力配分が違ってもきれいなフォーシームを投げられていたのが、WBC球では本当に同じ力加減でリリースしない限り〝操れている〟感触にならなかったそうです。

 ただ、彼はそんなジレンマを武器に変えることができる投手です。9日の韓国サムスンとの練習試合では変に出力を変えることなく直球を投げ、バットの芯を外したり、バットを折るなど〝WBC仕様〟の投球を見せてくれました。無理にキレイなフォーシーム軌道を求めず、微妙に打者の手元で動くことを計算に入れ、空振りではなく「ゴロアウトOK」と、いい意味で割り切れた投球でした。侍ジャパンで第2先発の役割を期待されていることを踏まえれば、次の回の自軍の攻撃にもつながる〝賢い〟投球スタイルへのシフトチェンジにも見えました。

 当初、米国製のみとされていた滑り止めのロジンバッグが、日本製も使えるようになったのは追い風でしょう。伊藤投手はたっぷりつけて投げることで有名です。必要以上にベトつく米国製ではなく、慣れ親しんだ日本製のロジンとWBC球との〝いいあんばい〟を本番までに、感覚的な部分までしっかりとインプットできるはずです。

 2年前の東京五輪では準決勝、決勝で終盤の僅差の場面を任され、いずれも無失点。どこで投入されても、同じパフォーマンスが出せる適応能力の高さは大きな魅力の一つです。国際試合では技術同様に度胸も大事で、ハートの強さは代表投手陣でもピカイチの存在。緊迫した場面でも安心感を持って投入できる貴重な存在になってくれると期待しています。

(本紙評論家)