レンジャーズとの独占交渉期限が米国東部時間18日午後5時(日本時間19日午前7時)に迫っている日本ハム・ダルビッシュ有投手(25)の交渉の行方を、微妙な距離感で見守っている一人の後輩がいる。かつて「師弟」の間柄だった斎藤佑樹投手(23)だ。昨年のキャンプ中の蜜月ぶりが、いまやうそのように冷え切ってしまった両者の関係。もともとの野球観が違っていた2人に決定的な亀裂が走ったのは昨年5月のことだった――。

 契約成立まで予断を許さないとはいえ、いよいよダルビッシュのメジャー移籍が現実味を帯びてきた。公私にわたって面倒を見てもらった弟分の中田が「寂しい」と本音を漏らすように、多くの日本ハムナインがエースの退団秒読みという現実に感傷的になっている。

 そんな中、一人だけ複雑な心境で交渉の進ちょく状況を見守っているのが斎藤だ。入団当初は「目指すべきはダルビッシュさん」と公言していたものの、ある時期を境に蜜月関係がプッツリ。ついにはグラウンドで会話を交わすこともなくなり、初選出された球宴の頃になると冷戦が深刻化。テレビのインタビューで、斎藤が堂々と「自分のお手本になるのは武田勝さん」と言い切ってしまうほど、両者の関係は修復不能な状態に陥った。

 一体、何があったのか。その決定的な分岐点になったのは、昨年5月8日のソフトバンク戦といわれる。先発した斎藤は初回、わずか10球を投げたところで左脇腹に違和感を覚えて降板。その後、1か月半の戦線離脱を余儀なくされた試合だ。

 初回を無難に三者凡退に抑えながら首脳陣の判断で降板した直後のベンチ裏。斎藤はトレーナーの指示で、しばらく患部をアイシングしていた。しかし、試合が2回、3回と進み、緊急登板した多田野ら中継ぎ陣が奮闘する中で、斎藤の状態を気にしたダルビッシュがベンチ裏に様子を見に行くと、こんな光景を目撃してしまったという。

「運悪くダルビッシュが来た時に(斎藤)本人はメールを打っていたそうです。それで『お前、誰のせいで中継ぎや野手の人たちが必死に戦ってくれてるんだよ! 治療が終わったら、さっさとベンチに来て応援しろ』と怒鳴られ、周りにいた人間も苦笑いしたそうです」(チーム関係者)

 斎藤にしてみれば、患部の状態を心配して連絡してきた関係者に返答メールを送っていただけだった。しかし、常日頃から斎藤に対して「打っても、どこか響かない」「野球に対する姿勢が、どこか違う」と違和感を抱いていたダルビッシュの堪忍袋の緒が切れてしまうのも仕方ないタイミングだった。

 その後、エースは斎藤と接触することを意識的に避け、親しい選手らに「あいつはいろいろ教えてあげても『はい』というだけで、何も実践しない」と不満を漏らし、周囲も両者の距離を傍観するしかなかったという。

 チームメートとして、わずか1年限りの関係。糸が切れたままの両者は壊れた関係を修復する機会もないままに、別れの時を迎えようとしている。