獣神サンダー・ライガーが気になる話題やプロレス観を語る「獣神激論」。今回のテーマは、ついに21日のノア・東京ドーム大会で現役生活にピリオドを打つ武藤敬司(60)だ。同じ時代を生きた盟友は、引退試合で新日本プロレスの内藤哲也(40)と激突する。自身も2020年1月に東京ドームで引退試合を行ったライガーから、武藤への〝ラストメッセージ〟とは――。
【世界のレジェンド ライガーが語る獣神激論(27)】いよいよ武藤選手の引退試合だね。僕から見た武藤敬司って、天才そのもの。本当にプロレスの神様に選ばれた人間だと思うよね。あれだけの身長で、運動神経で、スター性があって…ないものは髪の毛くらいか。俺と一緒だね、そこは(笑い)。リングでの一挙手一投足にお客さまが引き込まれていくのは(アントニオ)猪木さんに通ずるものだと思う。
まだデビュー前だったかな。彼や蝶野(正洋)、船木(誠勝)たちが若手時代に、大宮スケートセンターの大会についてきてたんだよ。練習が終わって猪木さんが若いヤツらを呼んでなんか言ってて。で、シャワーでも浴びてセコンドの用意しろって言われて「分かりました!」となった。そしたら普通さ、サッと軽くシャワー浴びてくるもんでしょ? 何を思ったかアイツら、風呂も入って、ビールも飲んで「ふざけんな!」って怒られてさ(笑い)。
でも、武藤選手の性格って嫌みがないし、天真らんまんっていうのか、純粋無垢っていうのか。それは上の人に好かれて、よくいろんな席に呼ばれてたよね。
僕の中で印象に残ってるのはスティングとの抗争かな。映像を見ていて楽しそうにやってるなって思ったよね。彼の求める、したいプロレスがあそこに詰まってたんじゃないかなと思うね。グレート・ムタのラストマッチ(1月22日、ノア横浜アリーナ)で組んだのを見て、プロレスは大河ドラマだなって改めて思ったよね。
引退試合の相手に内藤選手を指名したひらめきも、やっぱり天才だと思いましたね。1月(21日)の新日本・横浜アリーナ大会の解説席で「ちょっと行ってくるわ」って、あまりにもサラリと言ってリングに向かうからビックリしたんだよ。そういうところが天才たるゆえんだよね。体が先に動いちゃってるんだもん。内藤選手の返し方もうまかったしね。「やる」とは言わないけど「スケジュール空けときます」って。内藤哲也として最高の答えだと思ったよ。やっぱり二人とも、役者が他のレスラーと一枚も二枚も違うよ。
最後の最後、武藤選手にはビッグバンで輝いてほしいと思うよね。僕もそういう経験を積んでるからあまり言いたくないんだけど、東京ドームで引退できるなんて選ばれし者だと思うんだよ。誰でも立てる舞台じゃないし、なかなか東京ドームで引退ってチャンスはないわけだからね。
でも、引退した後の武藤敬司って全く想像がつかない。指導者でやってるのも姿も浮かんでこないし…だからアイツ、もしかしたら1か月くらいしたら「やっぱり復帰します」って出るんじゃねえかって思うよ。俺だって引退する前に、アイツに散々イジられたからね。「ほとぼりが冷めたら復帰したらいいよ」って。ホントに。アイツこそ、それ、やりかねねえなって(笑い)。でもファンもね、武藤敬司なら許して楽しんでくれるんじゃないかって、思うよ。
最後にメッセージを? そうだねえ…やっぱり武藤敬司の世界で東京ドームを包んでほしい。それだけ。あとはケガしないように頑張ってくれって。武藤敬司に「お疲れさま」は似合わないよ。だって1年後に復帰するから(笑い)。期待してるよって。それが俺からの最後のメッセージだよ。