獣神サンダー・ライガーが気になる話題やプロレス観を語る「獣神激論」。今回のテーマは1月21日の新日本プロレス横浜大会で行われたノアとの対抗戦だ。メインでは内藤哲也が拳王を下したが、ライガーはこのユニット対抗シングル5番勝負の〝大将戦〟に決定的な差を見たという。また物議を醸しているIWGP世界ヘビー級王者オカダ・カズチカとGHCヘビー級王者・清宮海斗とのシングル戦(21日、ノア・東京ドーム)は時期尚早との見方を示した。

【世界のレジェンド ライガーが語る獣神激論(26)】新日本プロレスの横浜大会は盛り上がりましたね。選手同士熱くなる部分もたくさん見られて、対抗戦らしい対抗戦だった。ノアの金剛にも実力者がそろってるなと思ったし、新日本の選手もやっぱりコンディションいいなって思いましたね。

 結果的にメインで内藤が拳王選手に勝ってロス・インゴベルナブレス・デ・ハポンが金剛とのシングル5番勝負に勝ち越したんだけど…一つ気になったことがあって。ちょっと内藤が飛び抜けてるのか、拳王選手とはモノが違っちゃってたなって僕は感じたんですよね。それまでの4試合は、実力も拮抗した感じで進んでたんだけど。振り返ると、まだ拳王選手は早すぎたかなっていう部分がある。内藤の方が役者が上だったね。

 言い方が分かりにくいかもしれないけど、試合の間というか、試合運びというか。後になってあの試合を振り返った時に、攻めてても攻められてても「内藤のシーン」が頭に出てくるんだよね。「どっちが勝つか分からない試合だったね」じゃない。内藤の手のひらで転がされちゃったかなっていうのがあるんだよね。俺が新日本の人間だからひいき目に見ちゃってるだけなのかな…?

 武藤(敬司)選手も同じようなこと考えたから動いたんじゃないの? ノア所属の武藤選手が内藤を引退試合(21日、東京ドーム)の相手に指名したことは重い意味があると思うよ。自分のレスラー人生の締めくくりはこいつだって、ひらめいたというか気持ちがうずいたんだろうね。

1・21の大将戦は内藤(右)が拳王を下した
1・21の大将戦は内藤(右)が拳王を下した

 もちろん拳王選手の伸びしろはすごくある。もっと経験を積んで、彼の成長を考えたら、半年なり1年なり海外に出て苦労をしてみてもいいのかなって思うね。オーラっていうものは技と違って、身につけたいと思って身につくものではないからね。いろいろな環境で挫折を乗り越えた上でトップを務めることが、オーラをまとうってことなんじゃないかな。

 それから今回の対抗戦から因縁が生まれてカズチカと清宮選手のシングルがドームで組まれたけど、これもまだシングルで戦うのは早いと思うんだよね。清宮選手はキャリア7年くらいでしょ。技術を磨いて身につけて自由に使えるようになるには、時間がかかる。僕はカズチカが盤石だと思うよ。

 現時点でカズチカが「やらない」って言っているのも「まだお前とやってもしょうがないでしょ」って感じてるからじゃないのかな。もちろんシングルで戦いたい気持ちは分かるし、焦りもあるんだろうけど、清宮選手が熟成してから試合を見たいよね。

 ノアの選手は原石の集まり。ただの石っころになるのか、何億もする宝石になるのか、これからだと思うんだよ。拳王選手もそうだけど、もっと大事にしたいなって思うんだけどね。

 カズチカだって内藤だって、日本でも海外でもいろいろ苦労して、そこから這い上がってきてるんだから。もしこの試合が内藤と拳王選手の試合のようになってしまったら「もったいないな」って僕は思います。