ソフトバンクのリチャード内野手(23)が年明けから福岡県内で西武・山川穂高内野手(31)の自主トレに5年連続で参加していることが7日、分かった。
昨年末の契約更改の席では、山川のすすめでプロ野球人生初の〝ぼっちトレ〟敢行を宣言していたが、「アグー塾卒業」から方針転換した裏には何があったのか。
決して後ろ向きな理由ではない。「俺のところに来るか」。年の瀬、卒業を推奨したはずの師匠が優しく誘ってくれた。メッセージの真意を理解してしっかり行動に移したからこそ、苦境で手を差しのべられた。
真相はこうだった――。プロ5年目の昨季、ウエスタン・リーグ新記録の29本塁打を放ち、秋にプエルトリコ・ウインターリーグに武者修行に出たリチャード。プエルトリコ滞在中から単独トレの事前準備を進めていた。だが、目星がついていた候補地の施設改修の時期が被るなどの不運も重なり、年内に自主トレ先を決めきれなかった。
施設の確保だけでなく、手伝ってくれるスタッフを集め、その他諸々の手配など一人で自主トレを行うのは想像以上に苦労が多い。「山川さんからは『全部一人で準備する過程で人としての成長がある。俺もそうだった。だからリッチー、全部一人でやってみな』と言われたのが、そもそもは単独トレを決めた理由でした」。
山川は自身のプロ野球人生を振り返って、同じ沖縄生まれのかわいい後輩に覚醒のヒントを与え続けてきた。
愛弟子も師匠の思いを受け止め、複数の候補地にコンタクトを取り続けたが、選定は思いのほか難航。〝一見さん〟ゆえの難しさを痛感することも多かった。今回、山川が行う福岡県内の施設もその一つだった。
「山川さんが、たまたま担当者の方から僕が動いていたことを知らされたみたいで。それで『人に頼らず、ちゃんと1人で動いていたんだな』ってなったみたいです。結果的に場所を確保するところまではいけなかったですが、そこまでの過程を山川さんに認めていただいたのかなと思っています」
泣きついたわけではなく、人伝いに〝本気度〟を認めてもらった結果が再合流の真相だった。
レギュラー獲りを期待された昨季の一軍成績は23試合の出場にとどまり、打率1割5分9厘、3本塁打に終わったリチャード。だが、長谷川勇也打撃コーチ(38)が「直すところが一つもない美しいスイング」と称すなど無限の可能性を秘めている。チームの垣根を越えて、本塁打王3度を誇る獅子の絶対的主砲が2019年から自主トレに帯同してきたのも、将来NPBを代表するスラッガーになり得る潜在能力を見込んでのこと。もどかしい思いをしているのは本人同様、山川も同じはずだ。
今季にかけるリチャードの気概は、山川直々の再招集で証明済み。年男となる2023年こそ、突き抜けてみせる。