西武・山川穂高内野手(31)のFA問題が権利取得前から注目されている。

 昨年12月2日の契約で、山川は1億4000万円増の2億7000万円で2023年シーズンの契約を更改した。41本塁打、90打点で初の2冠王に輝いた主砲にはその金額よりも球団が提示した4年契約を断り、プロ10年目の節目シーズンを単年契約で臨む決断をしたことの方に西武ファンの注目が集まった。

 山川は「(過去2年の低迷で)今年ダメだったらやめようかなと思っていた。それぐらい自分にプレッシャーをかけてやっていたので、10年目の節目ですし、野球人生の全てをかけて臨む意味で絶対に単年の方がいいという思いで結んだ」とその理由を説明した。そして、これは西武ファンがこれまで何度も経験してきた〝別れの決まり文句〟でもある。

 すでに〝オープンリーチ〟のような状況となっているソフトバンクへのFA移籍が実現してしまうことへの〝虚無感〟が国内FA権取得前の今から広がっている。

 そして、そのための布石もすでに形となって現れている。それが「7年45億円」ともいわれる巨額契約で注目を浴びている近藤健介外野手(29)の陰に隠れながら、4年総額3億円超の契約で早々にホークス入団が決まった前DeNA・嶺井博希捕手(31)の存在だ。

 山川と嶺井は同じ沖縄出身の同級生で、ともに大卒。2013年ドラフト同期生で大学時代から親交が深い。山川が富士大4年時の日米大学野球の日本代表候補合宿では東京六大学、東都大学の選出メンバーが幅を利かせる中、その主流派とは一線を画し九州、沖縄出身の大瀬良(広島)、梅野、岩貞(いずれも阪神)、嶺井が「九州ジャパン」というライングループを結成。「先に年俸1億円にいったやつがメシをおごる」という約束のもと、切磋琢磨しプロ入り後もその友好関係を継続させてきた。

 中でも同郷で山川が「世界で一番いいやつ。性格がマジでいいんです」と絶賛する嶺井との信頼関係は深く、嶺井とは同じ沖縄尚学、亜大の直系の先輩である東浜との親交も深く山川にとってはやりやすい環境だろう。

 もとより「球界一の陽キャ」を自認する山川はどんな環境に行っても困ることはないだろうが、ソフトバンクが嶺井との関係性を知った上で〝先乗り獲得〟に動いていたとすれば…。もはやその流れを止める手だてはないことになる。

(金額は推定)