ノア1日の日本武道館大会で、米WWEのスーパースター・中邑真輔(42)がグレート・ムタとのドリームマッチを制した。

 代理人・武藤敬司が2月21日東京ドーム大会で引退することに伴うムタの引退ロードで実現した〝奇跡の一戦〟。WWEのメインロースターが他団体に参戦するのは異例中の異例で、掛け値なしのドリームマッチは、団体最高峰のGHCヘビー級選手権(王者・清宮海斗VS挑戦者・拳王)を差し置き大会のメインイベントに据えられた。

 中邑の入場曲「The Rising Sun」が日本武道館に流れると、ボルテージは早くも最高潮に達する。優雅な入場で観衆を魅了した中邑は、黒と赤のコスチュームでムタと対峙。会場には異様な緊張感が漂った。

 足4の字固め、ドラゴンスクリューとムタの足攻めにさらされた中邑は、閃光妖術をブロックして反撃。スライディングジャーマン、セカンドロープからのジャンピング式キンシャサをさく裂させる。

 ところが必殺のキンシャサを狙ったその瞬間、待っていたのはムタの毒霧。顔を真っ赤に染められた中邑は悶絶し、場外でコスチュームを引き裂かれ、イス攻撃を浴びてしまう。

 中邑はリングに戻るとナックルパートを連発して再び攻勢に。スリーパーでダメージを与えると、ムタのお株を奪う花道を走ってのラリアートを発射。飛び付き式腕十字固めで捕らえてみせる。しかし、今度はムタの緑の毒霧を浴びて脱出を許してしまった。

 閃光妖術を連発されて窮地に陥った中邑だったが、カウンターのキンシャサで決定打を許さない。なおもムタが毒霧を発射しようとすると、何とまさかのリップロック。毒を吸い取って中邑がムタに毒霧を噴射という衝撃の〝ミラクル〟を起こす。最後は必殺のキンシャサで、プロレスの醍醐味をすべて詰め込んだ一戦に終止符を打った。

 試合後のリングで中邑は感極まった表情を浮かべながら「奇跡をありがとう。バイバイ、マイ・アイドル。ムタ」とマイクアピール。ムタに肩を貸しながら、2人で退場した。

 バックステージでも特別な一戦を終えて感情を押さえきれない中邑は涙。「言葉を出せば出すほど、自分自身が受けた感動が薄れていってしまうような感じが。試合前から、ずっと殺してきたわけですよ…こういう感情は。プロとして。それをこういった完璧な奇跡のタイミング。元日に日本武道館、グレート・ムタ、最高の入場。たまんないっすね、マジで。超感激。奇跡をありがとうございました」と時折声を詰まらせながら振り返った。

「あんなにデカかった壁が、何ら色あせることなく、まだまだデカい壁でいてくれて。この上ない感激です」とムタ、そして武藤に感謝の言葉を口にした中邑は「武藤敬司は60で引退しますが、それに比べればハナタレ小僧ですから僕は。まだまだ世界で戦っていきたいと思います」と豪語。希代のスーパースター2人が生んだ奇跡の一戦は、間違いなくプロレス史に残る名勝負となった。