【赤坂英一 赤ペン!!】 中日が京田をDeNAにトレードしたことには驚いた。今季は最悪の成績に終わったとはいえ、選手会長に就任して3年目。当然、球団から来季の復活を期待されていると思っていたからだ。

 ほんの5年前の2017年、5位に沈んだ中日で、新人王を獲得した京田は中日ファン唯一の希望の星であり、地元マスコミの救世主というべき存在だった。開幕スタメンに抜てきされると、6月から「1番・遊撃」に定着し、打率2割6分4厘、4本塁打、36打点、23盗塁の好成績をマーク。149安打は球団史上最多、かつリーグの新人としても史上2位だった。1位は巨人・長嶋茂雄の153安打(1958年)で、シーズン終盤は長嶋さんを抜きそうだ、抜けるぞ、抜いてくれ、と連日マスコミにあおられていた。

 ところが、京田本人にこの話を聞くと、「もうヒットの数について聞くのは勘弁してください」と苦笑いして言った。

「長嶋さんの記録を抜くとか、僕自身はまったく意識していませんでしたから。ただ必死に、がむしゃらにやっていて、気がついたら数字がついてきていただけなんです」
 当時の京田は内野安打にできるかどうかの微妙な当たりの場合、一塁にヘッドスライディングをするのが常だった。このひたむきな姿勢もファンの好評を博したのだ。が、これも1年目のシーズン終了後に「もうやらないことにしましたよ」と、こう“宣言”している。

「自分としては大学時代(日大)でもやっていて、ゲームの中で自然に出るプレーの一つでした。結構、ファンの皆さんにも喜んでもらえたようです。でも、冷静に考えたら、やっぱり危ない。シーズン中から、ケガにつながる恐れがあると、首脳陣の方々に再三注意されました。今後は慎みたいと思います、はい」
 周囲の大騒ぎにも自分を見失うことなく、常にクールに今後の課題を見極めていた。そんな京田にとって「とても教わることが多かった」のが二遊間コンビを組んだ先輩・荒木(現中日内野守備走塁コーチ)である。

「一番勉強になったのは守備の際、“周辺視野”を心がけるようにというお話でした。守っていると、つい打者だけに集中しがちですが、味方バッテリーや塁上の走者なども含め、その場面全体を視野に入れる。そうしたほうが、正しいポジショニングができるんです」
 憧れの選手は元阪神、ロッテの鳥谷敬。来季以降も中日で得た財産を生かし、鳥谷のように息長く活躍してほしい。