日本シリーズ第5戦が27日に京セラドーム大阪で行われ、オリックスが吉田正尚外野手(29)のサヨナラ本塁打で6―4とヤクルトに劇勝。対戦成績を2勝2敗1分けのタイに戻した。接戦が続く今回の日本シリーズだが、勝負の分かれ目はどこだったのか。そして今後の展開は…。本紙評論家の伊勢孝夫氏が指摘した。

【新IDアナライザー・伊勢孝夫】二転三転したシーソーゲーム。展開ひとつでどちらに転んでもおかしくない試合だった。

 吉田正のサヨナラ2ランにしても、2つ前のプレーでオスナが走塁妨害を取られていたら、二死二塁で吉田正は敬遠だった。延長ならオリックスは難しいだろうな…とも思っていたから、中嶋監督にとっては吉田正サマサマだろう。

 というのも、この試合でオリックスは、前日の第4戦で好投した若い中継ぎ投手の宇田川と山崎颯を外し、ベテランの平野と、今季限りでの引退が決まっている能見をベンチに入れていたから。選手を無理使いしない中嶋監督のやり方も分からないでもないが、短期決戦なら話は別だ。ここで無理をしないでどこでする。平野は8回に登板して無失点で切り抜けたからよかったが、延長で能見が打たれて負けるようなことにでもなれば…中嶋監督の采配の是非が問われるところだった。

 一方、ヤクルトの高津監督の采配は落ち着いていた。対戦成績でリードしているということもあるのだろう。先発のルーキー・山下が4回にピンチを招いてもドタバタすることなく、5回を投げ切らせた。この試合を落としても、第6戦で神宮に戻れるという余裕が感じられた。ああいったベンチの落ち着きが、6回の再逆転につながったようにも思う。

 ただ、誤算だったのは吉田正を目覚めさせてしまったことだ。これまで吉田正に対しては、ヤクルトバッテリーは細心の注意を払っていた。このシリーズでの攻め方を見るに、ヤクルトの「吉田正対策」は、おそらくこうであろう。「吉田正はファーストストライクは必ず振ってくる。カウントを悪くしてもいいから、入りはボールゾーンから」。それまでの吉田正の打席、捕手の中村はファーストストライクはほとんど際どいコースで、ボール気味の球に手を出させて凡打に打ち取っていた。ところが5回の本塁打は1ボールからの2球目のストレートが甘く入り、サヨナラ本塁打は1ストライクからのフォークが甘く入ってしまった。

 ここまでのヤクルトがオリックス打線を封じていたのは、吉田正を徹底マークし、他の打者との分断に成功していたから。そこが揺らいでくるとなると…。状況は本拠地に戻れるヤクルトが、まだまだ有利だが、もう一波乱起きてもおかしくない。

(本紙評論家)