香川の怪童はどこまでも愛される男だ。巨人が阪神との競合の末、ドラフト1位で交渉権を獲得した高松商の浅野翔吾外野手(17)。「甲子園のヒーロー」「ドラフトの目玉」となった高校生の知名度は増すばかりだ。世間からの視線を感じるほどに自意識過剰になることは自然なことで、17歳はある「悩み」を周囲に漏らしているという。人気球団の栄えあるドラ1は〝有名税〟に苦しむ一方で、温かい支援に勇気をもらっている。

 人柄の良さがにじみ出ていた。運命のドラフトから一夜明けた21日は指名あいさつ。浅野は30分以上も前に学校のエントランスで待ち構えていた。巨人の大塚球団副代表、水野スカウト部長、担当の岸スカウトが原監督のメッセージが入った「確定札」を持参。「やったぜ!! 巨人軍は待ってるぜ!」との熱量MAXのメッセージに、緊張気味の表情も一瞬だけ緩んだ。

 指名の経緯についても初めて詳細を伝えられた。「原監督が甲子園のセンターバックスクリーンのホームランを見て、すぐに(方針を)切り替えたというか(ドラ1は)即戦力と言っていたのが、将来性に変わったとおっしゃっていた」。

 今夏の選手権大会準々決勝・近江(滋賀)戦で、西武に5位指名された世代ナンバーワン右腕・山田陽翔から放った2ランには、名門のドラフト戦略を一変させるインパクトがあった。その後、巨人は12球団最速で「1位公表」。一途な思いが成就しての縁に、浅野は「本当に頑張って、一日でも早くジャイアンツの勝利に貢献しないといけない」と力強く恩返しを誓った。

 球団から松井秀喜、岡本和真に続くスラッガーの系譜を受け継いでほしいとのメッセージも伝えられた。金のタマゴへの期待は膨らむばかりで、今後の露出、注目度アップは避けられない。これも人気球団の宿命だが、多感な17歳は人知れず「悩み」を抱いているという。

 甲子園のスターで、ドラフトの目玉となった浅野。「僕、老けて見えますか?」。仲間やチーム関係者に問いかける姿が夏ごろから増えた。無意識に目にするネットなどで「40歳くらいに見える」などといった実年齢とかけ離れたコメントの書き込みを気にしていたという。

 ただ、ここからが愛される男・浅野翔吾。周囲は気落ちする怪童に「それは風格があるからだろ」「俺もほしいぞ、そんな風格」「だからホームラン量産できるんだな」と真顔で返してきたという。ポジティブな返しをくれる高商ファミリーの優しさに救われた。浅野の気は晴れ、雑念を振り払いプロ入りの準備にまい進している。

 この日、水野スカウト部長は「10年、20年の逸材。ジャイアンツファンに本当に愛されるキャラになると思うし、相手球団からは憎まれる存在になるんじゃないでしょうか」と改めて才能に加え、人柄にも触れて期待を寄せた。仲間が手を差し伸べたくなる男――。謙虚で人柄のいい人間性の賜物であり、まさにスターの資質だ。